花と向き合い始めて30余年。フラワーアーティストの元気の源は五穀米や納豆、蜆など、体にいい食品が並ぶ朝食である。

【川崎景太さんの定番・朝めし自慢】

前列左から時計回りに、ご飯(五穀米・木の芽)、えびアボカドチーズ、鰆蒲鉾、金目鯛蒲鉾(下画像参照。大葉・茗荷・さらし長葱・大根おろし・山葵)、納豆とオクラとメカブの混ぜ合わせ(鰹節・醤油)、味噌汁(蜆・葱)。蒲鉾は5年ほど前に、弟の景介さんから静岡・伊東土産にもらったのが最初。以来、川崎家の朝食や酒肴の定番に。醤油は使わず、好みの薬味を添えて食す。箸置きは一輪挿しの機能を備えた瀬戸焼(購入可。問い合わせは『(株)KTION(ケーション)』/東京都大田区山王2-8-7 電話:03・6429・7257)。川崎さんのオリジナルデザインで、食卓に季節感を演出してくれる。
組み合わせの妙が楽しめる、斬新な水産練り製品。上から「えびアボカドチーズ」756円、「鰆蒲鉾」756円、「金目鯛かまぼこ」702円。ねりものや武/静岡県伊東市中央町5-4 問い合わせ:0557・48・7074
食後のデザートはカスピ海ヨーグルトにバナナの輪切りを添えて。ヨーグルトには腸内環境を整える効果があり、バナナは豊富な食物繊維により便通改善にも効果的だという。

朝は早い。「4時半頃に起床。毎日ではありませんが、花市場に行く日は5時に出発。朝食は帰宅後の7時40分からです」と川崎景太さん・ろまんさん夫妻。ろまんさんはピアニスト。初夏の花が食卓回りを彩る。

「マミフラワーデザインスクール」──この学校を創設したのがフラワーデザインの先駆者、マミ川崎さん(2004年6月17日号の当欄に登場)である。

「母は卒寿を迎えましたが、総長として今も週1回は学校に顔を出し、作品も発表しています」

マミ川崎さんの長男で、フラワーアーティストの川崎景太さんが語る。けれど、景太さんは最初から“花”の道を選んだわけではなかった。マミさんはふたりの息子に、何事においても強制することはなかったという。

母のマミ川崎さん、弟の景介さん(左)と一緒に自宅で。50歳前後の頃。「母は料理上手で、仕事をしながらも毎日の食事に手を抜いたことはなかった」と、景太さんは語る。

「幼い頃、飼っていた鶏の餌になるハコベを無我夢中で探し回っていたのが、植物への関心の原点かもしれません。だが、少年にとって世の中は植物以外のおもしろいことに満ちており、母の仕事に興味をもつこともありませんでした」

高校卒業後は、米・カリフォルニア芸術工芸大学に留学。ランドスケープデザイン(※風景・景観をデザインすること)を学ぶが、徐々に陶芸や版画に惹かれる。興味の対象が絞れぬまま、母の作品に感銘を受けたのは28歳の時だ。土と向き合っていたのが、植物や花に目を向けるようになり、思いのままに作品を作り始める。

一時は陶芸で身を立てようと思い、東京・福生の陶芸工房に入って修業。食器や花器よりも陶面作りに夢中になった。留学していたアメリカから帰国した20代半ばの頃だ。

「それを見ていた母が基礎から勉強したほうがいいと助言をくれ、スクールで4年ほど学びました」

その後はテレビや雑誌、展覧会などで、既存のアレンジメントの常識を打ち破る斬新な作品を次々と発表し、日本を代表する作家として活躍。2006年~’13年までスクールの主宰も務めた。

食事プラス7つの健康法

花と同じように、食品と向き合う料理も嫌いではない。朝食を自ら調えることも多い。

「納豆やオクラ、メカブなどのネバネバ系食品が好きです。これらには食物繊維が多く含まれ、腸内環境を整えて免疫力をアップさせる効果もあるんですよ」

主食は五穀米。疲労回復効果のある蜆の味噌汁も欠かさない。

食事以外の健康法が7つ。

1.花からパワーをもらう。
2.花や木が相手の肉体労働を楽しむ。
3.早寝早起き。
4.誕生日(年齢)を忘れる。
5.人と交わる。
6.ストレスをためない。
7.ポジティブ志向。

これらの健康法には、芸術家の情熱と科学の合理性が同居する。

代表作品の「生きている花屛風(秋)」。花材はドウダンツツジ、ススキ、キク、ケイトウ、エノコログサ、バラの実、キイチゴなどで、物言わぬ草や木や実の声が聞こえるようだ。
新しい試みの「花グラフィック」は、生きた植物の個性をアート素材として生かしたもの。花びらや茎や葉、また蔓などを平面的表現として再構築し、衣類や壁紙、パッケージデザインなどに利用されている。
多数ある著書の中から3冊を紹介。左から『花は語る』は著者の花世界を堪能できる。『暮らしに息づく花』は生活の中に花を効果的に取り入れるヒントを紹介。『素敵に花一輪』は一輪挿しの新アイデアを提案する。

“生きものとしての植物”と共生、共感する

アトリエで作品のアイデアを構想中の川崎さん。花材と向き合う眼差しは真剣そのものだ。箸置きなどの商品の問い合わせは『(株)KTION(ケーション)』/東京都大田区山王2-8-7 電話:03・6429・7257

2014年4月、スクールを弟の景介さんに任せ『(株)KTION(ケ ーション)』を設立。「Keita Flower Design」を立ち上げた。より深くフラワーデザイン、フラワーアートを追求したいと思ったからである。

花の世界に入って30余年。ひとつ、確信をもったことがある。花はモノではなく、生きものだということだ。人本位に花をデザインするのではなく、同じ地球上の仲間として花文化を創造したい。

「私が花を生ける時、その花はいまだ見ぬ己の美しさ、他の生きものとの出会い、置かれた環境に満足してくれているか、をまず第一に考えます。花は言葉では答えてくれませんが、私が鋏を置いた時、満足気な花の声が聞こえるような気がするのです。私はその声を信じてやみません」

花から多くのことを学ばせてもらっている恩返しに、自然界では見せてくれなかった花の姿や心を多くの人たちと分かち合い、感動を共有したい──。そこには“生きものとしての植物”という一貫した姿勢があり、現代社会に向けて共生、共感というテーマを投げかけている。

大切な人への贈り物やおもてなしのためのフラワーアレンジメントにも対応。写真は白のトルコギキョウをメインにしたフラワーボックス(1万円)。受注があってから花材を仕入れるので、注文は早めに。
花飾りの原点ともいえる一輪挿し。そのために開発された、川崎さんデザインのミニ花器(3000~4000円)。これがあれば、誰でも気軽に花のある暮らしが楽しめる。

※この記事は『サライ』本誌2022年7月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )

 

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