ビストロオーナー夫妻が揃って休める月曜日は、ワインを楽しみながらブランチ。これがふたりの1週間分の元気の源だ。

【関根進さんと葉子さんの定番・朝めし自慢】

前列中央から時計回りに、ボンレスハム(ペコロスと胡瓜のピクルス・ラディッシュ)、目玉焼き、ウィンナーソーセージ(サラダ菜・マッシュルーム・紫玉葱)、生ハムと洋梨、チーズ(ロックフォール・ミモレット・コンテ)、スパークリングワイン、グリーンサラダ(プリーツレタス・ロメインレタス・胡瓜・トマト・マッシュルーム)。休日なので、サラダはニンニクのきいたドレッシングで和えたもの。ブランチのワインは気取らずにタンブラーで。2人前にしては量が多めだが、余ったら夕食までの間につまむ。
好きなものを食べる主義で、パンはバゲット(好みの具をはさむ)とクロワッサンが進さん用、トースト(練り胡麻と蜂蜜を塗る)は葉子さん用だ。
トーストに塗る練り胡麻は「和泉屋の胡麻」。主に高級割烹からの注文が多く、白練り胡麻は極めてなめらかな舌触りで胡麻豆腐や和え物にも。問い合わせ:丸赤商店 電話:03・3831・5701

休日のブランチは午前11時頃。「仕事がある日の朝食は9時頃で和食の献立。休日のブランチは会話とワインを楽しみながら1時間ほどかけて」と関根進さん・葉子さん夫妻。

東京・西麻布の交差点から1本入った道路は、ビストロ通りとも呼ばれる。日本のビストロの草分け、『ビストロ・ド・ラ・シテ』(以下シテ)があるからだ。

「前のオーナーシェフがこの店を始めたのが1973年。9年後の’82年に私どもが引き継いだのです」

と、オーナーの関根進さん・葉子さん夫妻が語る。

1970年代~’80年代といえば日本のフランス料理はホテルで食すもの。ましてやビストロを知る人も多くはなかった。シテでもビストロと名乗りながら、レストラン風の料理も出していたが、

「’90年頃になると町にフランス料理の店が急増し、原点に戻ろうと当時のシェフと1か月半、パリを中心にビストロ巡りをしたのです」

と、進さんが語る。こうして生まれたのが豆煮込みのカスレや、野菜惣菜をボウルに盛り込んだサラダ・シテだった。レストランではお目にかからない、豪快で骨太なビストロ料理である。

一方、葉子さんは1978年に開店したフレンチレストラン『オー・シザーブル』(以下シザーブル)のマダムとして、多くの名シェフを育てたことで知られる。

「けれど夫が75歳、私が70歳になったのを機に、シテと統合いたしました。だから、今のシテにはシザーブルの要素も入っています」

ビストロとレストランの融合。現在のシテのメニューには、ふたつの店のシェフが守ってきた料理が並ぶ。時流に合わせたシテの進化は、関根夫妻の軌跡とも重なる。

1990年、進さんがブルゴーニュワインの利酒騎士団(シュバリエ・ド・タストヴァン)に認定された時のパーティで祝福を受ける。前列右が進さん、中央が葉子さん。

接客とワインが健康の秘訣

シテでは3年前からランチを始めた。ランチは葉子さん、ディナーは進さんの受け持ちだ。従って、ふたり揃っての休日は月曜日のみ。

「この日はワインと料理を楽しむブランチです。好きなものは我慢したくないので、夫にはウィンナー、私には生ハム、チーズも夫用にミモレットとコンテ、私用にロックフォールを用意します」

不味いものは食べたくないというふたりは、野菜ひとつとっても味の濃い季節のものをと『健菜倶楽部』から取り寄せているという。

『健菜倶楽部』(東京都渋谷区初台1-47-1 小田急西新宿ビル 電話:0120・201・371)から届く野菜によっては、ブランチにポテトサラダが登場することもある。サラダに使う塩も同倶楽部のフランス・ノアムーティエ島の天然海塩だ。

店で接客すること、食事を美味しくするためにワインを欠かさぬこと。これが夫妻の健康の秘訣だ。

関根夫妻がブランチで楽しむスパークリングワイン。食前酒としてはもちろん、サラダやハムなどの料理にもよく合う。 問い合わせ:ブリストル・ジャポン 電話:03・6303・8511
進さんは腰痛解消のためにプールで泳ぎだしたのをきっかけに、50歳を過ぎてからトライアスロンを始めた。写真は57歳で参加した水泳4㎞、自転車106km、ランニング25kmを見事完走した佐渡の大会で。外国の大会にも出場したが、3年前に引退。

確かな食材と手作りを守り、2023年秋に50周年を迎える

シテを代表する料理。前列から時計回りに、エスカルゴバターが香るエスカルゴ、野菜の下に豚の耳や砂肝、ローストポークなどが宝物のように潜んでいるサラダ・シテ、白花豆などをふっくら煮て、鴨のコンフィとメルゲーゼ(ソーセージ)をのせたカスレ。伝統の味を守りながら、総じてバターを控えてオリーブオイルに代えるなど軽めに仕上げている。

シテの料理の味はオーナーの関根夫妻が守り、代々のシェフがそれを具体化してきたが、

「料理の大枠を決めたら、あとはシェフに任せます。今の浜中良和シェフで9代目ですが、それぞれのシェフが新しい感性で長くても古びない料理にしてくれました」

と、進さん。一貫して譲らなかったことがふたつある。ひとつは確かな食材、ふたつ目は手作りだ。

「塩ひとつとっても、下味用の塩と調理用の塩は使い分けていますし、腸詰めやリエット(パンに塗って食べる肉料理)、ピクルス、パスタのカラスミ、パンやデザートのケーキもシェフの手作りです」

という葉子さんは、一昨年から「お家でディナー」(1万5000円、税・送料込み)というお取り寄せを始めた。自宅にいながらにしてシテの味が楽しめるというわけだ。

「お家でディナー」にも入っている鴨のコンフィ。パリッとした皮に、骨に沿ってナイフを入れると、ほろほろと身がくずれる鴨はフランス・ブルターニュ産の極上品だ。

2023年秋、シテは50周年を迎える。記念行事を考慮中だが、

「初めてのお客様にも、わが家のように寛いでほしい、というのが私どもの願いです」

と語る。客をもてなすのが、オーナー夫妻の天職である。

開店当時から変わらぬ内装の店内は、フランスの“古き良き時代”の雰囲気に満ちている。関根夫妻と9代目シェフの浜中良和さん(59歳)との3人で店を切り盛りしている。
『ビストロ・ド・ラ・シテ』から日本のビストロ文化が始まった。 東京都港区西麻布4-2-10 電話:03・3406・5475 営業時間:(火)17時30分~22時 (水)~(日)12時~13時30分、17時30分~22時(最終注文) 定休日:月曜、火曜昼

※この記事は『サライ』本誌2022年2月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )

 

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