皆さんは、漢方薬と聞くとどんな印象がありますか? 「苦いけど体によさそう」「葛根湯は知っているけど……」など、「そもそも漢方ってどんなもの? 」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そんな基本的な漢方に関する疑問や基礎知識を、漢方の専門家にわかりやすく解説してもらいます。 第9回のテーマは、「漢方薬と副作用」です。あんしん漢方(オンラインAI漢方)の薬剤師、篠原明宏さんに教えてもらいました。
体に優しい漢方にも副作用はある?
一般的には「漢方薬は西洋薬より副作用が少ない」といわれますが、漢方薬で副作用が起きる可能性はゼロではありません。個人差も大きく、副作用が出るかどうかは体質や症状に影響される部分もあります。
まずは、漢方の原料である生薬(※)の種類ごとに起こり得る副作用症状について解説します。
※生薬とは、植物や鉱物などのなかで薬効が認められているものです。
1.麻黄(マオウ)
動悸や発汗、排尿障害が起きることがあります。また、食欲不振や胃もたれなど、胃腸障害の原因になる場合もあります。血圧が上昇することがあるため、心臓の弱い方、高血圧や不整脈など持病がある方は慎重に用い、かかりつけ医にも相談しましょう。
麻黄を含む主な漢方薬:葛根湯、麻黄湯、小青竜湯など
2.甘草(カンゾウ)
むくみや高血圧、手足のしびれ、力が入りにくくなる、または、こわばることがあります。筋肉痛症状が出ることもあります。
甘草を含む主な漢方薬:小柴胡湯、人参湯、芍薬甘草湯など
3.附子(ブシ)
舌や唇、手足のしびれ、吐き気や嘔吐のほか、のぼせや動悸などが起きることがあります。とくに、体の小さなお子さんは注意が必要です。
附子を含む主な漢方薬:真武湯、麻黄附子細辛湯、甘草附子湯など
4.山梔子(サンシシ)
5年以上の長期服用により、むくみ、びらん、潰瘍のほか、まれに「腸間膜静脈硬化症」という疾患を発症することがあります。この疾患は、腹痛、下痢、便秘などの症状があらわれます。
山梔子を含む主な漢方薬:加味逍遥散、黄連解毒湯、茵蔯蒿湯など
ここに挙げた漢方薬はあくまでも一例です。これ以外にも副作用が出やすい漢方薬は存在します。続いては、副作用を避けるために重要な服用方法について解説します。
漢方の副作用を避けるために注意すべきこと
漢方薬の副作用は、多くの場合、服用の仕方に気をつけることで避けられます。特に、注意すべき3つのポイントをご紹介します。
1.規定量以上の服用
漢方薬は、規定量以上の服用で効果が強く出すぎてしまうことがあります。たとえば、「甘草」は、さまざまな漢方のほか、食品や嗜好品にも含まれているため、意識せずに多く摂取してしまうことがあります。すると、血液中のカリウムが低下したり、血圧が上昇したり、むくみが起きる「偽アルドステロン症」という症状があらわれることがあります。
2.市販薬やサプリメントとの併用
漢方薬と市販品やサプリメントとの併用も、場合によっては副作用が起きるので注意が必要です。たとえば、「麻黄」の主成分であるエフェドリンは、せき止め薬として一般的な市販薬にも含まれています。エフェドリンを過剰摂取すると発汗、動悸、血圧上昇などが起きます。
複数の薬の併用で作用が強くなったり、逆に弱くなったり効きにくくなったりすることを「相互作用」といいます。たとえ市販薬やサプリメントであっても、漢方薬と併用する場合は医師や薬剤師に相談することが大事です。
3.2種類以上の漢方を独断で同時に使用した場合
漢方薬は2種類以上を組み合わせて処方されることもありますが、独断で併用することは危険です。それぞれの漢方薬に含まれる生薬の成分を把握していないと、安全に使用できる容量を超えてしまい、副作用が生じる可能性があるためです。
漢方薬は、患者さんのそれぞれの体質や症状を診たうえで処方されるもの。自己判断で使用すると適切な効果が得られないどころか、かえって体調が悪化することがあるため注意しましょう。
市販薬の飲み合わせと同様に、2種類以上の漢方薬を使用する場合でも、きちんと医師や薬剤師に相談しましょう。
漢方は体質に合ったものを専門家に選んでもらうのがベスト
西洋薬よりは頻度は少ないものの、漢方薬でも副作用が起きることはあります。重要なことは、副作用を過剰に恐れ漢方薬を避けることではなく、正しく服用することです。
漢方薬における正しい服用とは、「体質に合ったものを飲む」ということです。漢方薬は、いわばオーダーメイドの薬です。それぞれ人に合わせて処方されます。自己流で判断せず、きちんと漢方薬の専門家である医師や薬剤師に相談すれば、自分の体に合った適切な漢方薬を処方してもらえます。
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副作用に気をつけ正しく漢方薬を使いましょう
漢方薬の副作用は、きちんと医師や薬剤師に相談することで避けられます。生薬それぞれに起きやすい副作用の特徴があり、規定量を越えた服用や、複数の薬の服用はとくに注意する必要があります。自分の症状や体質を理解したうえで、体に合った漢方薬を使用することが大事です。
さて、次回からは、具体的に漢方薬の特徴や効果、注意点などをわかりやすくご紹介していきます。第1回目は「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」です。ぜひご覧ください!
<この記事を書いた人>
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