文/中村康宏
「ヒートショック」とは、気温の変化により血圧が乱高下し、心筋梗塞や脳梗塞などの疾患が起こることをいいます。気温の下がる11月〜2月の間は特に発症しやすく、ヒートショックによる年間死亡者数は。2018年の統計で約5400人とされています。
これは交通事故の年間死亡者数である約3500人を大きく上回り、私たちの身近に起 きている事故のひとつであるといえるでしょう。
ヒートショックのリスク
ヒートショックには、気温などの環境的要因と、生活習慣病などの持病による要因などに分けられます。
以下の項目に当てはまるものが多いほど、ヒートショックを発症するリスクが高くなります。
・65歳以上である
・高血圧や糖尿病、動脈硬化など血管系の疾患がある
・肥満、睡眠時無呼吸症候群、不整脈がある
・熱いお風呂やサウナ、水風呂が好き
・飲酒後に入浴をする
温度差などの環境的要因は、浴室や脱衣所の暖房をつけて暖めたり、シャワーや湯船の温度は38~40度に、サウナと水風呂を繰り返すなど急激な温度差が出るような行為は避けるといった、今すぐ実践しやすいものが多いかと思います。
しかし、持病に関してはすぐに改善される訳ではないので、まずはご自身の持病を自覚し、治療を意識した行動が大切です。
特に日本は高血圧患者が多く、高血圧の有病者数としては2017年時点で4300万人にものぼるとされています。その内、治療をして適切にコントロールされているのが1200万人と、高血圧患者の約1/4程度にとどまり、血圧の高い状態が放置されていることがうかがい知れます。
高血圧はヒートショック以外にも動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、認知症などの原因ともなります。少しくらい高くても大丈夫だろうと高を括らず、これを機に食事の見直しや内科への定期的な受診を考えてみてはいかがでしょうか。
高血圧を改善するための食事療法
1.減塩
塩分の摂りすぎで血圧が上がりやすくなることは周知の通りかと思いますが、塩分はうま味を感じるための基本味のひとつとなるため、単に塩や醤油等の調味料を減らすだけでは食事に旨味を感じられずストレスになり続けられない原因となってしまいます。
減塩にも様々な方法があり、取り組みやすい所から行ってみるのもおすすめです。
・漬物や汁物・麺類の汁は残す
・サラダのドレッシングや後からかける調味料類ははじめから沢山かけず、少量ずつかけて足りなければ足す (食べ終わった後の食器にドレッシングやソースなどの調味料が残っていればかけすぎという指標になります)
・減塩醤油など元々塩分が減らされている調味料を使う
・鰹節や生姜、出汁など香りのある物を使って調味料のかける量を減らす
・片栗粉やなめこ、オクラなど粘り気のある食材を活用する(粘り気により薄味でも味を感じやすくなります)
・調理の味付け時、最後のちょい足しをやめる (少し味が薄いかな? くらいで止める)
2.血圧降下作用のある食べ物の摂取
・カリウム
カリウムは、ナトリウムが腎臓で再吸収されるのを防ぎ、体内の余分な塩分の排泄を促してくれるため、高血圧の予防や改善に効果的な栄養素のひとつといえます。カリウムを豊富に含む、ほうれん草や小松菜などの葉物野菜、ひじきやワカメなどの海藻類、バナナやキウイといった果物等を意識的に摂るのも良いでしょう。
カリウムは水溶性なので、熱湯で茹でたり煮たりするよりも、電子レンジで温めたり、生で食べると効率よくカリウムを摂取することができます。
・EPA、DHA
青魚に含まれるEPAやDHAには血液をサラサラにし、動脈硬化を防いでくれるため、血圧を下げる効果が期待できます。
・硫化アリル
玉ねぎやニンニク、ニラ、ネギなどに含まれる硫化アリルは、血栓をできにくくし血液の流れをスムーズにする為血圧を下げる効果があるといわれています。
3.味覚異常の予防と改善
老化と共に味が感じにくくなる味覚異常を訴える方が年々増加しています。日本人の食事は亜鉛が不足しやすく、加齢や服薬による影響等により更に亜鉛が排泄されやすくなるため、亜鉛不足により味覚異常をきたしやすくなるのです。
本来の味覚を取り戻すことが出来れば自然と今よりも薄い味付けで満足できる可能性があります。
亜鉛を多く含む食材として、牡蠣や鰻、赤身肉、大豆製品、胡麻等が主に挙げられます。亜鉛はビタミンCと一緒に摂ることで働きが活性化されるので、前述の食材と野菜や果物を合わせて食べるのもおすすめです。
高血圧対策におすすめレシピ
牛肉とニラのオイスターソース炒め
【材料(2人分 (1人分 塩分:1.3g、230kcal)】
牛もも肉薄切り 160g
卵 1個
ニラ 半袋
オイスターソース 大さじ1
生姜チューブ 5cm
減塩醤油 小さじ1
はちみつ 小さじ1
塩・コショウ 少々
ごま油 小さじ1
(お好みでもやしなどの野菜を加えてもOK)
【作り方】
(1)ニラは3~5㎝に切る。
(2)卵は器に溶いておく。
(3)オイスターソース、減塩醤油、はちみつ、生姜チューブを混ぜてタレを作る。
(4)フライパンにごま油を入れて加熱し、牛肉を炒め、(1)を加えてニラが軽くしんなりするまで火を通す。
(5)(3)を加えて全体を馴染ませる。
(6)(2)を回し入れて軽く火を通す。
(7)コショウを振り完成。
* * *
季節的に気になるヒートショック、さらにはヒートショックの原因となりうる高血圧の予防と改善に関して解説しました。しっかりとご自身の血圧をコントロールし、寒い冬を元気に乗り切りましょう。
文/中村康宏
医師。虎ノ門中村クリニック院長。アメリカ公衆衛生学修士。関西医科大学卒業後、虎の門病院で勤務。予防の必要性を痛感し、アメリカ・ニューヨークへ留学。予防サービスが充実したクリニック等での研修を通して予防医療の最前線を学ぶ。また、米大学院で予防医療の研究に従事。同公衆衛生修士課程修了。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」にて院長。一般内科診療から健康増進・アンチエイジング医療までの幅広い医療を、予防的観点から提供している。近著に「HEALTH LITERACY NYセレブたちがパフォーマンスを最大に上げるためにやっていること」(主婦の友社刊)がある。
【クリニック情報】
虎の門中村クリニック
ホームページ:https://toranyc.com
住所:東京都港区虎ノ門3丁目10-4 虎ノ門ガーデン103
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