生きていると、モヤモヤした感情に直面することがあります。やる気が起きない、人とのコミュニケーションがうまくとれない、物事にどこから取りかかればいいかわからない……。問題と呼ぶには些末なモヤモヤが積み重なって、人生全体がどんよりと曇ってしまいます。
そして、いつしか人生そのものに「こんなはずではなかった」というあきらめが生まれてしまうのです。
そんなモヤモヤした感情を取り払い、自分が望む人生を手に入れる方法として、自分自身に質問することを提案する人がいます。
マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で、現在も組織開発・人材育成コンサルタントとして活躍する大嶋祥誉さん。著書『すべての仕事は「問い」からはじまる』で語られる、人生に差をつける大嶋さん流・問いの極意をのぞいてみましょう。
■ネバーランドから脱出する
「本当はこうしたい」と思いながらも、周りを見渡すと誰もそんなことはしていないからと気持ちにブレーキをかける……。人生には、少なからずそういった場面があるもの。
大嶋さんは、そうした「こうあらねば」「周囲に合わせねば」「失敗を避けなければ」といった感覚に縛られた社会をネバーランドと呼び、本当に送りたい人生をみつけるにはネバーランドからの脱出が必要だといいます。
コーチングやコンサルティングを通して顧客の問題解決に取り組んできた大嶋さん。その問題解決手法は、突き詰めると問いかけることだったといいます。
人間の脳は、問いを与えられると不安を感じ、無意識のうちに答えを探すもの。問いを与えれば、脳はその方向で考え始め、答えがみつかるとすっきりして、大きな安堵感、多幸感をもたらします。
昔聴いた曲名や俳優の名前が思い出せなくて落ちつかなかったり、「続きはCMのあとで」といわれるとつい見たりしてしまうのも、脳のそうした機能のなせる技。
問いを立てることで脳が自然と働き始め、自分自身が納得できる答えを自動的に見つけだしてくれます。その積み重ねによって、人生そのものに差が出てくるのです。
■自分自身を知る10の問い
では、人生の質をアップさせる効果的な問いとはどんなものでしょうか。こちらが、大嶋さんのすすめる人生の質を高める10の問い。
1.自分が大事にすべきことは?
2.もし今日が最後の日だとしても、いまからやろうとしていたことをするだろうか?
3.自分が本当にやりたいことは何か?
4.自分が喜ぶことは何だろう?
5.自分がお金を積まれてもやらないことは何か?
6.目の前のことをワクワクするものにできないか?
7.何があれば自分が楽しく生きられるのか?
8.本当にそれしかないの?
9.どんな想いからやっているのか?
10.選びたいのは、どんな未来か?
10の質問で浮かび上がってくるのは、自分が人生で大切にしたいと思っているものやこと。1や3のような本質をつく問いのだけでなく、5や7のような具体的な問いも自分自身を知る手がかりになります。
これらの問いを自分自身に投げかけるだけで、目の前の状況が整理され、自分にとって大事なこと、自分が本当にやりたいことがシンプルに浮かび上がってきます。
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自分がこうしたいと思う生き方を難しいと感じるのは、失敗したときの恐怖のせいだと大嶋さんはいいます。
しかし、世の中には本当の意味で失敗といえるものはない、と大嶋さんは指摘します。
自分に問いかけ、自分にとって大事なものがわかっていれば、うまくいかなくても後悔せず、別の可能性を問い直すことができるのです。
人生の質を数値化したり比較したりすることはできません。だからこそ、常に自分が一番選びたいと思える未来を選択していくことが人生の質を高める効率のよい方法といえるのかもしれません。
【参考図書】
『すべての仕事は「問い」からはじまる』
(大嶋祥誉・著、SBクリエイティブ)
文/よりみちこ