取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

ワーグナーのオペラ演奏で右に出る者はいないマエストロ。
血糖値を正常に維持する朝食が、世界的に活躍する源泉だ。

「人参ジュースは朝の定番です」と飯守泰次郎さん。右奥の写真は父・重任さん。

前列右から時計回りに、パン、ハム、発酵バター、ヨーグルト(キウイフルーツ)、人参ジュース(林りん檎ご ・レモン)。パンは全粒粉100%で、ホームベーカリーで焼く。ハムは『シュマンケル ステューベ』(東急百貨店 渋谷東横店 フードショー内)の朝食セットを愛用。発酵バターは生乳に乳酸菌を加えて発酵させたバターで、特有の香りとコクがあり、ヨーロッパでは一般的だ(写真はよつ葉乳業製)。

飯守泰次郎さんと音楽との出会いは、生まれ育った旧満州・新京(現中国・長春)にあった。

「裁判官だった父の赴任先です。父は仕事の傍らピアノを弾き、洋楽のレコードを聴いていた。僕もベートーヴェンの交響曲7番3楽章などには幼心に胸が躍りました」

5歳で終戦。1年後に帰国するが、父だけは11年間抑留され、届いた葉書には「子供たちは何か楽器をやってほしい」と書いてあった。飯守さんもピアノを習い、やがて桐朋学園ピアノ科に進む。だが、ある人の言葉が指揮者の道へと導いた。その人こそ、音楽教育者の斎藤秀雄さんである。

「“君は絶対音感があって初見が上手い。このふたつができるなら、いっそ指揮者はどうか”と……」

大学は指揮科に学び、卒業後はアメリカに留学。昭和41年、25歳でミトロプーロス国際指揮者コンクールに入賞した時に出会ったのがリヒャルト・ワーグナーの孫、フリーデリント・ワーグナーさんである。彼女に誘われて渡独。以降、30年にも及ぶ欧州武者修行が、ワーグナー指揮の第一人者と称される礎となった。

人参ジュースの材料は人参2本、林檎1個、レモン1個。人参と林檎は皮ごとジューサーにかけ、仕
上げにレモン果汁を絞る。この分量でふたり分、約500ccだ。

血糖値対策には食物繊維

多忙な日々を支えるのは、独自の健康法だ。まず、起きてすぐ冷水「空海の泉」を飲む。暑がりで汗かきということもあるが、人間の体の60%は水という理由からだ。大病の経験はなく、体型も若い頃と変わらない。だが、血糖値が高い。

「父も姉も高かったのでおそらく遺伝的なものでしょうが、薬よりもできれば食事で改善したい」と自宅で摂る食事は、パンなら全粒粉100%の生地をホームベーカリーで焼く。ご飯なら、自宅で玄米を発芽させた発芽玄米が定番だ。いずれも食物繊維が多く、ビタミンB1やミネラルも豊富。この食事を続けて10年余り。血糖値は正常になり、主治医からも褒められているという。

前列中央から時計回りに、発芽玄米のご飯、梅干し、ひじきの煮物(大豆・人参)、納豆(うずら卵)、ヨーグルト(キウイフルーツ)、人参ジュース(林檎・レモン)、けんちん汁(人参・大根・牛ご 蒡ぼう・こんにゃく・干し椎しい茸たけ・じゃがいも・豆腐・鶏肉)。

発芽玄米は玄米(写真右)を3日ほど温水に浸けて発芽させる(左)。無農薬天日干し米が発芽しやすい。

作曲家のメッセージを聴衆に伝える媒介者、それが指揮者です

飯守泰次郎さん(C)読売日本交響楽団 撮影/青柳 聡

この8月、飯守さんは4年の新国立劇場オペラ芸術監督の任期を終える。だが、多忙であることに変わりはない。4月から仙台フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任し、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団や関西フィルハーモニー管弦楽団の桂冠名誉指揮者なども兼任する。

「指揮は音楽的スポーツで、アスリートなみの運動量です。2時間ほどの演奏で体重が1kg、長い曲だと2kgは落ちます」

ただし酷使するのは上半身だけ。下半身を鍛えるために、時間を見つけては歩く。1日1時間が目標だ。併せて、パーソナルトレーナーについての運動も課す。主に体幹と下半身を支える筋肉を強くするのが目的で、トレーナーは実際に演奏会に来て、鍛えるべき筋肉をチェックしてくれたという。

週に2~3回、パーソナルトレーナー指導のもと筋肉を鍛える。スクワットは、体幹と姿勢保持筋を強くする効果がある。

楽団を率いる指揮者だが、「たとえば飯守の『第九』(交響曲第9番)ではなく、あくまでもベートーヴェンの『第九』なのです。指揮者は、作曲家の思いを聴衆に伝える媒介者であるべきです」

タクトを振って半世紀、その信念に揺るぎはない。

自宅でピアノを弾きながら、楽譜を読み込む。音符の背後にある作曲家の思いを読み込むのが、指揮者の重要な仕事だ。

飯守さんのCD3枚を紹介。右から『飯守泰次郎ブルックナー交響曲第4番ロマンティック』は飯守泰次郎さんによる東京シティ・フィルの音楽的で緻密なアンサンブルが魅力。『ニーベルングの指環 ハイライト ワーグナーの森へ2』は飯守さんと東京都交響楽団によるワーグナー第2弾。『ブラームス交響曲全集』は飯守さんと関西フィルの集大成。(いずれもフォンテック)

取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

※この記事は『サライ』本誌2018年7月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。

 

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