理由もないのに、何だかモチベーションが上がらない人の処方箋【不摂生でも病気にならない人の習慣】

文／小林弘幸

「人生１００年時代」に向け、ビジネスパーソンの健康への関心が急速に高まっています。しかし、医療や健康に関する情報は玉石混淆。例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも医者たちが正解を主張し合っています。なかなか医者に相談できない多忙な人は、どうしたらいいのでしょうか？　働き盛りのビジネスパーソンから寄せられた相談に対する「小林式処方箋」は、誰もが簡単に実行できるものばかり。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説します。

【小林式処方箋】「ふっふっふっ」と短く息を吐き出してみる。

強制的に交感神経を高める方法

朝からモチベーションが上がらない。どうも眠気が取れずすっきりしない。そんな時もあるでしょう。

普通ならば、朝は黙っていても交感神経が上がっていくゴールデンタイムですので、自然とモチベーションも上がっていくものですが、睡眠不足や疲労が重なって自律神経のバランスが崩れていると、そうならないこともあるのです。

しかしどうしてもモチベーションを上げたい。そんな時、すぐに効き目が期待できるのは、「ふっふっふっ」と短く息を吐き出すことです。

あえて浅く速く呼吸をすると、交感神経の働きが高まります。交感神経の高まりとモチベーションは連動していますので、強制的に交感神経の働きを活発にすればいいのです。そうすると、体が、休息モードから活動モードへと切り替わります。

つまり、単純にゆっくり「深呼吸」をして心身を落ち着かせるのとは、ある意味、逆の行動をすればいいというわけです。

浅く速く呼吸してもうまくいかない時は、両手を上げてから「ふっふっふっ」とやってみましょう。こうすると、必ず浅い呼吸になるので、効果がさらに期待できます。

時間を区切って自分を追い込む

時間を区切って、あえて追われながら働く、という方法もあります。

私はこれを、午後の睡魔に襲われる時間帯に、実践しています。

目安の時間は10分間。スマホにはタイマーがついていますので、これを活用するといいでしょう。例えば、「書類整理10分間」と決めます。とにかくその時間内で片付くよう、強制的に体も頭もフル回転させます。

この時、「時間に追われる」というプレッシャーも感じますので、日頃から「プレッシャーに弱いな……」と悩んでいる人にとっては、プレッシャーを克服する訓練にもなります。

このように、時間を区切って時間に追われながら行動すると、交感神経が高まります。交感神経が上がれば、眠気は覚め、やる気も上がります。

「区切る」という方法は、ビジネスのあらゆる場面で応用できます。

例えば、最も疲労感が募る夕方の時間帯は、「この仕事が終わるまでがんばろう」と考えるよりは、「この仕事は５時まで」と時間を区切ったほうが、仕事がはかどります。

最初に述べたように、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキです。

やる気がない、モチベーションが上がらない、という時は、あえて自分に緊張を強いて、アクセルを踏みます。ちょっとイライラしているな、緊張しすぎているな、という時は、深呼吸などでブレーキを踏みます。

自分の中で、自律神経のバランスをうまく整えることができれば、それほど努力をしなくても、たくさん我慢をしなくても、人生をプラスに転じることは可能なのです。

 　『不摂生でも病気にならない人の習慣』

小林弘幸 著

小学館
定価 924 円（本体840 円 + 税）
発売中

文／小林弘幸
順天堂大学医学部教授。スポーツ庁参与。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。また、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもある。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説した『不摂生でも病気にならない人の習慣』（小学館）が好評発売中。