文/小林弘幸

「人生100年時代」に向け、ビジネスパーソンの健康への関心が急速に高まっています。しかし、医療や健康に関する情報は玉石混淆。例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも医者たちが正解を主張し合っています。なかなか医者に相談できない多忙な人は、どうしたらいいのでしょうか? 働き盛りのビジネスパーソンから寄せられた相談に対する「小林式処方箋」は、誰もが簡単に実行できるものばかり。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説します。

【小林式処方箋】オフィスで1分間ストレッチをやってみる。

誤ったストレッチは逆に怪我を招く

ビジネスパーソン、とりわけデスクワークが多い人は運動不足になりがちです。先にウォーキングによる解決策を提案しましたが、他にも効果的な方法があります。

皆さんにその方法を教えると、その簡単な内容と時間の短さに、一様に驚かれます。

それが4種類の「自律神経ストレッチ」です。たったそれだけ? そう感じるかもしれませんが、これから紹介するストレッチは、多くのトップアスリートを指導している末武信宏医師(順天堂大学医学部非常勤講師)と共に考え出したもので、その成果はすでにアスリートの間で実証されています。

実は、運動する前に「間違ったストレッチ」を行うと、むしろこれが原因で怪我をしやすくなっていたことが、最新の研究で明らかになってきました。

例えば、アスリートは怪我が多い職業です。しかし、彼らは準備運動の大切さをよく理解していて、一般の人よりも試合前に入念なストレッチをしています。本当ならば、「アスリートのほうが、怪我が少ない」という結果になっていなければおかしいのです。

ところがそうではありません。

なぜか。実はここにも、自律神経の働きが関与していました。

筋肉には、縮める時に働く「屈筋」と、伸ばす時に働く「伸筋」の2種類あります。歩く時に、膝の関節を曲げたり伸ばしたりしていますが、関節を曲げる時には屈筋、伸ばす時には伸筋が働いています。全身の筋肉が屈筋と伸筋に分かれ、協調して働くおかげで、私たちは、スムーズに歩いたり走ったりできるというわけです。

筋肉が収縮するためには、十分な血液が必要です。では、血流を調整する役割を担っているものは何でしょうか。皆さん、もうおわかりですね。それは自律神経なのです。

では皆さんが日頃やっているストレッチを思い浮かべてください。

例えば、アキレス腱を伸ばしますよね? あるいは上腕を伸ばすストレッチ。実はどれもこれも、屈筋と伸筋のどちらか一方を「伸ばす」ものばかりなのです。

つまり偏っていたのです。このことが、筋肉に送られる血流のアンバランスを招き、その結果、屈筋と伸筋のバランスが崩れ、転倒や肉離れなどの怪我に繋がっているのではないかと考えられます。

なぜ伸ばすだけではいけないのでしょうか。実は筋肉は一度伸びてしまうと、なかなか元に戻らないのです。伸びてしまった筋肉は、柔軟性が損なわれ、可動域も狭まるので、当然、動きも悪くなります。つまりストレッチをやればやるほど、怪我のリスクが高まってしまうのです。

たった4種類の簡単なストレッチ

では正しいストレッチとはどのようなものか。それが私たちの考案した自律神経ストレッチなのです。

もちろん、これはアスリートが運動する前だけに行うものではありません。自律神経のバランスを整え、さらに自律神経のレベルを上げるトレーニングにもなっていますので、寝起きのボーッとした時、運動不足で体がダルい時、何か調子が悪いなと感じている時、パフォーマンスを最大限に発揮したい時。こうした時にこそ、おすすめのメソッドなのです。

それでは、詳しくお教えしましょう。

Ⅰ.手の先を持って体側を伸ばす

1.足を肩幅に開き、真っ直ぐに立つ
2.両腕を上げ、右手の先を左手で掴む
3.体を正面に向けたまま、真っ直ぐ上に伸ばし、続けて右の体側を伸ばすように上体をできるだけ左に倒す
4.右が十分に伸びたら、手を持ち替え、真っ直ぐ上に伸ばし、続けて今度は左の体側を伸ばすように、右に倒す
 この時、上に伸びた時に息を吸い、体を倒しながらゆっくり息を吐きます。こうすると、体は普段以上に伸びやすくなります。
 この運動は、片側の伸筋を伸ばすのと同時に、反対側の屈筋を刺激しているので、自律神経のバランスを整えながら、筋肉への血流を促すことができます。

Ⅱ.手の先を持って横に伸ばす

1.足は肩幅に開き、両腕を前に出し、右手の先を左手で掴む
2.体を正面に向けたまま、右腕を、斜め上、真横、斜め下の3方向に、左手で左側に引っ張る
3.手を持ち替え、左腕を右手で右側に引っ張る
 この時も、引っ張る時に息を吐くようにします。このストレッチは、一見、腕を伸ばしているだけのように見えますが、実は、背中から脇腹まで、上半身の伸筋と屈筋がバランス良く刺激されます。
 この2つのストレッチのポイントは、できるだけ「手の先を持つ」ということです。手の先を持つことで、全部を伸ばすことができます。

Ⅲ.肘を固定して手首を回す

1.背筋を伸ばし、右腕を前に出し、手首が上になるように肘を直角に曲げる
2.右肘を左手で掴み、位置を固定する
3.そのままの位置で、右手首をグルグル回す
4.腕を替え、左手も同様に行う
 これは、手首のストレッチのように思われるかもしれませんが、実は肩甲骨を動かす運動です。ポイントは、肘をしっかり固定することです。肘を固定した状態で末端を動かすことにより、手首の動きに連動して肩甲骨が動き、肩甲骨の可動域が広がるのです。
 ちなみに、肘を机についてやったり、立ってやったりしてもいいでしょう。

Ⅳ.膝の上で足首を回す

1.膝が直角になる程度の高さの椅子に腰掛ける
2.右の足首を左膝に軽く乗せ、その状態で右の足首をグルグルと回す
3.足を替え、左の足首も同様に回す
 この運動は、股関節の可動域を広げます。歩行がスムーズになり、下半身の疲労も軽減されます。

これらの「自律神経ストレッチ」は、プロのアスリートには、計10分間やるように勧めていますが、皆さんはひとつにつき1分間で十分です。何かちょっとでも不調を感じたら、オフィスでチャレンジしてみてください。

『不摂生でも病気にならない人の習慣』

小林弘幸 著

小学館
定価 924 円(本体840 円 + 税)
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文/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。スポーツ庁参与。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。また、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもある。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説した『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館)が好評発売中。

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