さて、もう1品、これからの暑い時期に最適な甘味「トマトジュース入りくず餅」の作り方も松本先生に教わりましたので紹介します。
沖縄の「くず餅」は葛粉ではなく、サツマイモのでんぷん「芋くず」を使うのが特徴です。さらに、松本先生はアレンジを加えて、現代人の味覚に合うくず餅のレシピを考案されました。
「最近の子どもたちは、くず餅のような伝統的なお菓子をあまり食べようとしません。なんとか食べてもらいたいと考えたのが、トマトジュースを使ったレシピです。じつは、お年寄りから昔はくず餅にトマトを入れた、と聞いていたのです。試行錯誤を繰り返しましたが、生のトマトではどうしてもうまくいきません。
そこで、トマトジュースを使うことを思いついて試したところ、とても美味しく仕上がりました。トマトジュースは、無塩のものを選んでください。ちなみに、オレンジジュースやグレープジュースでも作ってみましたが、合いませんでした。トマトジュースは味に深みがあって一番美味しいですね」(松本先生)
単純な甘さだけではなく、そこに酸味が加わることでより複雑な味わいが生まれるようです。トマトジュースは、きな粉との相性もぴったりです。
新しい味を探していたら、その答えはお年寄りの記憶の中にあった--。まさに“温故知新”の甘味といえるでしょう。
<材料>
・ザラメ/230g
・水/1と1/2カップ
・芋くず/140g
・無塩トマトジュース/2カップ
・塩/少々
・レモン汁/大さじ2
・きな粉/適量
<作り方>
最後に、くず餅作りについて松本先生からのアドバイスです。
「加える砂糖は、白糖では美味しく仕上がりません。黒糖や三温糖でもよいのですが、ザラメがお勧めです。練り混ぜるときの火加減は、強火に近い中火にしてくださいね。その方がコシが強くなって、美味しく仕上がります。焦げやすいので、テフロン加工した鍋を使う方がいいでしょう」
沖縄の伝統菓子を2品紹介しましたが、どちらも滋味豊かで、その味わいは今風のスイーツに引けを取りません。ぜひ、挑戦してみてください。
取材・文/鳥居美砂
ライター・消費生活アドバイザー。『サライ』記者として25年以上、取材にあたる。12年余りにわたって東京〜沖縄を往来する暮らしを続け、2015年末本拠地を沖縄・那覇に移す。沖縄に関する著書に『沖縄時間 美ら島暮らしは、でーじ上等』(PHP研究所)がある。