日本料理「笹田」は私のお気に入りの1軒です。とりわけ、お椀のお出汁は定評があり、時々このお椀をいただきたいために「笹田」へ出かけたいと思うことがあります。
開店当初の「笹田」は、すし屋の居ぬきで、細く狭く、カウンター席の後ろはガラス戸で、冬など隙間風の入る店でした。
現在の店はカウンター席と個室のある立派な日本料理店ですが、料理は開店当初から簡潔な食材の組み合わせで見事な味を引き出すコンセプトは変わりありません。
先日は、「あなごの棒寿司」から始まり、定番の「揚げと九条葱のたいたん」が出て、お椀は「鱧と新玉葱」でした。「あなごと酢めし」「揚げと九条葱」「鱧と玉葱」と、どれもこれもシンプルな組み合わせ。
それでいて、味わいは深く、滋味に富んだものばかりでした。
御飯も炊き立ての美味しさを楽しめます。お替りは香ばしい「おこげ」を添えてくれ、「御飯」も立派な料理であることを教えてくださいます。
甘味は白玉を添えたあずきですが、この白玉も目の前で作ったばかりの出来立てで、絹のような舌触りの白玉です。
「笹田」を予約する際は、ぜひともカウンター席がお薦め。料理が出来上がる始終を目の当たりにすると、美味しさが倍増すること請け合いです。
【新ばし笹田】
住所/ 東京都港区西新橋1-23-7 プレシャスコート虎ノ門1階
TEL/03-3507-5501
営業時間/ディナー 18:00~21:00(L.O.)
定休日/日曜・祝日
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。