冬至は二十四節気のひとつで、1年で最も昼が短い日。ここ沖縄では「トゥンジー」と呼び、夕方5時半過ぎには陽も落ちて暗くなってきます。南国といっても、いよいよ本格的な冬の季節を迎えます。
全国的には、この日は柚子湯に入ったり、かぼちゃを食べたりしますね。沖縄にも、冬至に食べる料理があります。それは「トゥンジージューシー」です。
ジューシーとは雑炊のことですが、じつは2種類あって、一般にいう雑炊は「ヤファラ(軟らかい)ジューシー」、「ボロボロジューシー」と呼ぶこともあります。もうひとつは「クファ(硬い)ジューシー」、炊き込みご飯を指します。
冬至の日に食べるのは後者で、この時期に出回る里芋や田芋を使った炊き込みご飯です。
「沖縄には独自の行事があって、それも旧暦に行われます。ところが、不思議なことに、この冬至だけは日本全国同じで、その呼び名も一緒です。
沖縄では、この冬至にはクファジューシーを作って、夕食時に仏壇や火の神(ヒヌカン)にお供えします。具は豚肉、人参、椎茸に、沖縄でチンヌクと呼ばれる里芋や田芋が入ります。代わりに、サツマイモを使うこともあります」
そう話すのは、松本料理学院学院長の松本嘉代子さん。今回は松本さんに、里芋を使った「チンヌクジューシー」の作り方を教えてもらいましょう。
【チンヌクジューシー】
<材料>
米/2カップ
豚三枚肉(バラ肉)/150g
チンヌク(里芋)/200g(正味)
人参/40〜50g
干し椎茸/2枚
だし/3カップ
塩/小さじ11/2弱
醤油/大さじ1+小さじ2
<作り方>
①米を洗ってざるに取る。
②豚三枚肉は茹でて、5ミリ角に切る。
③人参、水に戻した干し椎茸も5ミリ角に切る。
④里芋は皮をむき、適宜に切って水につけたあと、軟らかく茹でる。
⑤鍋に①~④までの材料とだし、分量の調味料を加えて、普通のご飯を炊く要領で炊く。
「琉球料理では、生の椎茸は使いません。すべて干したものを使います。レシピに単に『椎茸』と書いてあっても、それは干し椎茸のことです。
ご飯を炊くだしには豚だしか、濃いめに取った鰹だしを使います。このだしに、干し椎茸の旨みも加わって、沖縄でいうところの“あじくーたー”になるのです」(松本先生)
「あじくーたー」は直訳すると「味が濃い」ことになるが、実際には“濃厚な味わい”といった方が正確だろう。
琉球料理は日本料理と同じく、だしが基本となる。しっかりだしを取り、さらに旨みやコクのある食材を加えることで、豊かな味わいを作り上げるのだ。
里芋は個体差があって、痛んでいたり、色が変わっている部分があるものも。材料はそれらを取り除いた、正味の分量となる。ぬめりとアクをとるために、茹でてから使う。
ご飯を炊くのは炊飯器でも構わない。
今年の冬至は12月21日。この頃は北風が冷たいので、実際の気温よりも寒く感じられる。沖縄も、これからしばらくは、冬模様に包まれる。
文/鳥居美砂
ライター・消費生活アドバイザー。『サライ』記者として25年以上、取材にあたる。12年余りにわたって東京〜沖縄を往来する暮らしを続け、2015年末本拠地を沖縄・那覇に移す。沖縄に関する著書に『沖縄時間 美ら島暮らしは、でーじ上等』(PHP研究所)がある。