蕎麦は確かに、盛られている器によって、呼び分けられることが多い。盛られている蕎麦は似たようなものでも、器によって呼び名が変わり、場合によっては値段までもが変わってくる。
「笊蕎麦」「蒸籠」を始めとして、器によって名付けられた蕎麦は、どんなものがあるだろうか。
まず、お椀に盛られた蕎麦で、岩手の名物として知られるのが「わんこそば」だ。
大きな四角いお盆のような器に盛られているのが、山形の「板蕎麦」。この器は「へぎ折敷(おしき)」という、杉や檜などで作った板の四方に縁を付けた角盆の大きなもので、これに盛るから「板蕎麦」なのだ。
同じ形のものが新潟の、あつみ温泉あたりに来ると「そね」に変わる。
さらに南下して小千谷に来ると、「へぎ蕎麦」になるが、蕎麦を盛るときの形が異なることと、ご存知のように、つなぎに布海苔を使うことが「へぎ蕎麦」の特徴となる。「へぎ蕎麦」と呼ばれるためには器による違いだけでなく、盛り方やつなぎなど、他の要素も分類上、重要になってくる。
出雲蕎麦で知られる「割子蕎麦」も、割子に盛られているところから付けられた名前だ。
変わったところでは、山口から九州にかけて見られる「瓦蕎麦」なるものもある。これも、瓦を器として使っているところから、名付けられた。
身近にある普通のメニューで、その名前の由来など、あまり考えたことのない「笊蕎麦」や「蒸籠」の仲間を、あらためて引っ張り出してみると、こんなに様々なものがある。