文/鈴木拓也

酒の文化があるところ、おつまみの文化も必ずある。
様々な国からなるヨーロッパでは、そうした文化も多種多様。スペインではタパス、フランスではアペロ、イタリアではストゥッツィキーノという呼び名で、独自におつまみ文化が発展してきた。
そして、古代から酒類が親しまれてきたギリシャには、「メゼ」がある。居酒屋、カフェニオ(伝統的なコーヒーハウス)、レストランでは、お酒とともにメゼが供されるし、家庭でも1日の疲れを癒す晩酌の友としてメゼを作る。
そうしたメゼの数々を1冊のレシピ集に収めたのは、アテネ在住の料理研究家、アナグノストゥ直子さんだ。書名は『おうちでギリシャ居酒屋』(イカロス出版 https://books.ikaros.jp/book/b10124187.html)という。
本書には、シンプルを極めた「とりあえずのメゼ」に始まり、揚げ物、野菜、卵、チーズ、肉、魚などを素材としたメゼの作り方が、わかりやすく紹介されている。
今回は、そこから3つのレシピを紹介しよう。
「サントリーニ島のトマトケフテデス」
ケフテデスは、「ギリシャ風のミートボール」とよく説明されるが、実際は肉を使わないものも多い。中でも「定番のひとつ」がこちら。トマトの名産地であるサントリーニ島の郷土料理として有名だそう。

【材料(6個分)】
A:
・トマト(粗みじん切り)……小1個(100g)
・玉ねぎ(みじん切り)……小1/2個(50g)
・スペアミント(粗みじん切り)……大さじ山盛り1(2~3本)
・塩……小さじ1/4弱
・こしょう……少々
B:
・薄力粉……約50g
・ベーキングパウダー……小さじ1/4
・オリーブオイル(または揚げ油)……適量
【作り方】
1. Aをボウルに入れて混ぜ、Bを加えポトッと落とせるぐらいのかたさにする(あまり時間をおくとゆるくなるので注意)。必要なら薄力粉を適宜足す(分量外)。
2. フライパンに油を5mm~1cm深さほど入れて中火で熱し、スプーン2つで生地を丸くととのえて落としていく。きつね色になるまで両面揚げ焼きにし、なかまで火が通ったらでき上がり。キッチンペーパーにとり、余分な油を切る。
「グラヴィエラチーズとぶどうのサガナキ」
サガナキとは、焼きチーズを主体としたモダンなギリシャ料理。グラヴィエラチーズは、羊乳や山羊乳から作られるハードチーズ。名前の由来であるスイスのグリュイエールチーズでも代用可。また、ぶどうの種類は何でもOKで、ぶどうの代わりにネクタリン、イチジク、プラムなどにしてもいいそうだ。

【材料(2人分)】
・グラヴィエラチーズ(またはほかの羊乳チーズ)……1切れ(80g)
・小麦粉……適量
・オリーブオイル……大さじ1
・ぶどう……60g
・ローズマリー……穂先1~2本
・蜂蜜……小さじ1/2
・レモン汁……小さじ1
・黒こしょう……適量
【作り方】
1. チーズは水にくぐらせ、小麦粉を全体にまぶしつける。蜂蜜はレモン汁とあわせておく。
2. 小さなフライパン(またはスキレット)を中火で熱し、オリーブオイルをひいてチーズを焼く。底になっている面がきつね色になったらひっくり返して端に寄せ、ぶどうとローズマリーも加える。
3. チーズはいじらず、ぶどうとローズマリーは軽く混ぜながら焼く。チーズのもう片面も焼けてぶどうが少し弾けたようになってきたら、鍋肌から蜂蜜とレモン汁を回し入れ、こしょうをかけて火からおろす。
「魚のサヴォロ」
海産物が豊富に採れるギリシャは、当然ながら魚介料理も多彩で、本書でも何品か載っている。そのうちの1つ、サヴォロとは揚げ魚のマリネのこと。アナグノストゥさんは、「店で小魚フライを頼むと山盛りで出てきて食べきれないことが多いのですが、半分持ち帰りにして家でこれを作るのが密かな楽しみ」と記している。

【材料(2人分)】
・ひめじ、あじなどの小さな魚まるごと(またはホキなどの切り身)…… 250g(下処理済)
・塩、こしょう……各適量
・小麦粉……約大さじ3
・オリーブオイル……約大さじ4
・ローズマリー(そのまままたは粗みじん切り)……5cmの枝3本
・にんにく(みじん切り)……1片
A:
白ワイン、白ワインビネガー……各1/2カップ
砂糖……小さじ1
【作り方】
1. 魚は普通に食べる時よりも少し多めに塩、こしょうをして、小麦粉をまぶす(袋を使うと粉がまぶしやすい)。
2. あまり大きくないフライパンか鍋にオリーブオイルを入れ中火で熱し、1を数回に分けて揚げる。全体がきつね色に揚がったらキッチンペーパーにとり、ガラス製などの保存容器に並べる。
3. フライパンに残った油にローズマリーを加え揚げ、にんにくも加え香りが立つまで炒める。Aを加え煮立て、2にまわしかける。冷蔵庫で数日もつ。
【今日のおいしい1冊】
『おうちでギリシャ居酒屋』

定価1870円
イカロス出版
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。
