文/編集部
1970~80年代、海外旅行のお土産は、もっぱら洋酒と「洋モク」だった。特にスコッチは高嶺の花。その憧れの「舶来モノ」が、今、ごく身近に楽しめるようになった。
ウイスキーの大きな波が、再びきている。ボトルキープや和食店での提供など、1983年、国内で37.7万キロリットルも消費されていたウイスキーだが、その後、消費量は3分の1まで凋落。再びその売り上げが蘇ってきたのは、2014年に放送されたNHK連続テレビ小説『マッサン』での認知と、国産ウイスキーの評価が上がったことによる。そして何より、居酒屋における若年層へのハイボール(ウイスキーのソーダ割り)の浸透に端を発していると思われる。
ウイスキーには製法上の違いから、大きく分けてモルトウイスキーと、グレーンウイスキーがある。そして、数十種のモルト原酒をブレンダーという職人がブレンド。これにさらにグレーン原酒を加えたものが、ブレンデッドウイスキーで、複雑な味わいが魅力だ。
ところがウイスキーブームの再来で、国産のモルト原酒が不足する事態に陥った。モルトウイスキーには数年にわたる「熟成」という工程が必要だからだ。国産のシングルモルトウイスキー(単一蒸溜所で造られたモルトウイスキー)のラベルからいつの間にか「◯年」という文字が消え、ひいてはシングルモルトウイスキー自体が休売になる。これは、ハイボールに主に使うブレンデッドウイスキー用のモルト原酒が不足したためだ。
そこで俄に注目されてきたのが、かつて高嶺の花だった「舶来モノ」のスコッチウイスキー。文士や政治家が愛飲してきた垂涎の銘柄が、酒税法の改正などで手ごろな価格で手に入るようになった。さらに、メーカーも新しい「家飲み」のスタイルを提案。スコッチの缶入りハイボールまで登場している。
流行に倣って気軽にハイボールで楽しむも良し。ロックで馥郁たる香りを楽しむも良し。かの時代を思い出しつつ、身近になった「舶来ウイスキー」を味わってみてはいかがだろう──。
【今こそ呑みたい舶来ウイスキー三傑】
『ジョニーウォーカー ブラックラベル12年』
「ジョニーウォーカー ブラックラベル12年」40度、700ml、参考価格2895円(税込)。世界で最も売れているスコッチ(※「Impact Databank2017」に基づく販売数量)。問い合わせ:キリンビールお客様相談室 電話0120・111・56
『バランタイン12年』
「バランタイン12年」40度、700ml、2800円。創業1827年、「バランタイン」の個性を作るのは40~50種ともいわれるモルト原酒。ファイネスト、12年、17年、21年、30年などの製品が揃い、世界第2位の売り上げを誇る。問い合わせ:サントリーお客様センター 電話0120・139・310
『オールドパー12年』
「オールドパー12年」40度、750ml、希望小売価格5000円。岩倉具視の遣欧米使節団がイギリスから持ち帰ったとされ、以来、上流階級、特に政治家から愛された。吉田茂や田中角栄元首相がファンだったことでも知られる。問い合わせ:MHD モエ ヘネシー ディアジオ http://oldparr.jp/
『新版 ウイスキー検定公式テキスト』好評発売中
本場イギリス・スコットランドを始め、アイルランド、カナダ、アメリカ、そして日本でも、ここ数年新たな蒸溜所が凄まじい勢いで創業を開始しています。本書は、これらすべての最新データを掲載。加えて日本でも勃興目覚ましい、クラフト蒸溜所も併せて紹介しています。
「ウイスキー検定」の2級、3級は、本テキストからの出題が中心となります。「ウイスキー検定」を受験される方には最強の参考書として、またウイスキーについてもっと蘊蓄を語りたい方には、恰好の読みものとしてお役立ていただけること請け合いです。是非、「ウイスキー通の座右の書」としてお読みください。
取材・文/大窪純一郎(本誌)
※この記事はサライ2018年12月号より転載しました。