今年1年間、『サライ』の本誌および公式サイト『サライ.jp』で紹介された商品や人物などから、サライ世代に最も意義のある製品やサービス、人を選定する「サライ大賞」。読者による投票と3名の審査員による選考が行なわれ、大賞と各部門賞が決定した。

審査員は写真家の田沼武能さん、テルモ社外取締役の松永真理さん、デザイナーの橋本夕紀夫さんにお願いした。

サライ大賞審査員(左)田沼武能さん。昭和4年、東京生まれ。写真家。木村伊兵衛に師事。東京工芸大学芸術学部名誉教授。平成15年、文化功労者に顕彰された。(中央)松永真理さん。昭和29年、長崎県生まれ。編集者、セイコーエプソン社外取締役。「iモード」の企画開発を担当。著書『シゴトのココロ』。(右)橋本夕紀夫さん。昭和37年、愛知県生まれ。インテリアデザイナー。昭和女子大学非常勤講師。JCD優秀賞受賞。著書『LEDと曲げわっぱ』。

「第16回 サライ大賞」大賞と各部門賞に選ばれたのは以下の商品・サービス、人物です。

【大賞】
エース 充電できるトロリーケース
『プロテカ マックスパス スマート』

【年齢に優しい部門賞】
オンキヨー&パイオニア 小型軽量な集音器
『フェミミ』

【サービス・企画部門賞】
日本橋三越本店
『日本伝統工芸展』

【人物部門賞(サライ・シニア・オブ・ザ・イヤー)
桑田ミサオさん
(笹餅製造者・91歳)

【大賞】
エース
『プロテカ マックスパス スマート』

6万6000円

本体にモバイルバッテリーとコードリール(1m)を備え、スマートフォンなら2回分の満充電ができるトロリーケース。アプリでスマートフォンと連携するGPSトラッカー(位置追跡端末機)を搭載し、互いの距離が離れると双方から通知音が鳴る。主室とは別に本体前面が開閉し、大小のポケットを装備する。国内線機内持ち込み可能。縦51×横39×奥行き25㎝。容量39ℓ。3.5㎏。

審査員による白熱した議論の結果、大賞はエース『プロテカ マックスパス スマート』に決定した。本製品は、スマートフォンなどデジタル機器を使うことを想定し、充電用のバッテリーを内蔵する機内持ち込み可能なトロリーケースである。しかも追跡機能を備え、スマートフォンと連携させれば、一定距離(約30m)離れると双方から通知音が鳴り響く。

また、素材成形から組み立てまで、すべて日本で行なわれているという点も、大賞に相応しいという評価だった。

「ペンや小物、ノートパソコンなどを入れるポケットを備えている点が高評価。しかも、すぐに取り出せるのがいい」(田沼さん)

「引いて歩く際の安定性がよく、キャスター(車輪)の動きも滑らかで音も静か。内装の明るい生地色も好印象です」(松永さん)

「デザイン性と機能性のバランスがみごと。使い勝手がよく完成度の高い製品です」(橋本さん)

軽さ、引きやすさ、質感、デザインに加え、内装の仕様や色遣いなども細かく確認する審査員のみなさん

※『プロテカ マックスパス スマート』についてのお問い合わせ先/エース 電話:03・5843・0606

【年齢・体に優しい部門賞】
オンキヨー&パイオニア

集音器『フェミミ』
3万2184円(税込み)

左右のイヤホンに備わるマイクが拾った音が、人の声か雑音かを瞬時に判断。雑音だけを自動制御して、人の声を聞き取りやすくする小型軽量な集音器。ハウリング抑制機能や落下防止のクリップ付き。約21時間の連続使用可能。幅3.35×高さ7.6×厚み1.4㎝。19g(クリップ部・充電池含まず)。イヤホンチップ4種、充電台、ストラップ、収納袋が付属。

年齢に優しい部門賞にはオンキヨー&パイオニアの『フェミミ』が選ばれた。音響メーカーが長年培った技術を活かした商品だ。

左右のイヤホンに搭載されたマイクの集音能力をあげつつ、周囲の雑音だけを制御し、聞きたい人の声が明瞭に耳に届く。電源を入れ、音量を調節するだけの簡単操作も審査員に高評価だった。

「人の声だけが聞こえやすくなるのが秀逸。聞こえ方が自然で、読みやすい日本語表示であることも評価できます」(田沼さん)

「小型なのに操作がしやすく、装着感も良好。両耳に装着するという安心感もあります」(松永さん)

「傍目からは音楽プレーヤーを使用しているように見えるのがいいですね」(橋本さん)

「左右ふたつのイヤホンに備わるマイクが耳元で集音するので、音の方向や立体感をしっかり感じられますね」(松永さん)

※『フェミミ』についてのお問い合わせ先/オンキヨー&パイオニア 電話:050・3388・6818

集音器『フェミミ』は下記「大人の逸品」でも販売しています。
↓↓↓

【サービス・企画部門賞】
日本橋三越本店
「日本伝統工芸展」

重要無形文化財保持者(人間国宝)を中心に伝統工芸作家、技術者等で組織する日本工芸会が、伝統工芸技術の発展と向上を目的に、昭和29年から年に一度行なう展覧会。陶芸、染織、漆しつ芸げい、金きん工こう、木竹工、人形、諸工芸の7部門から、人間国宝や巨匠、新人らの新作が鑑審査され、入選した約600点が展示される。同展は毎年秋、日本橋三越本店を皮切りに、日本全国を巡回する。

サービス・企画部門賞は、日本の伝統工芸技術を用いた作品が多数出品される「日本伝統工芸展」を、毎年開催し続けてきた日本橋三越本店に贈られる。

同展は今年で65回を数え、伝統工芸の技術の向上や発展を支えてきた功績は計り知れない。また、誰にも馴な染じみのある百貨店を会場にしていること。そして作品を間近に鑑賞できるだけでなく、作家と交流したりすることができる点なども高く評価された。

「作家と接するチャンスがあるのは素晴らしい」(田沼さん)

「作品を身近に感じられるのは百貨店ならではの魅力」(松永さん)

「美術作品を介して人と人とが?つながる。そこに同展が果たす重要な役割を感じました」(橋本さん)

?「このような文化的な催事を百貨店が半世紀以上も続けていることに意味があると思います」(橋本さん)

【人物部門賞】
桑田ミサオさん
(笹餅製造者・91歳)

桑田ミサオさん/昭和2年、青森県生まれ。子供の頃から、郷土料理・裁縫・編み物などを母に教わって育つ。昭和21年、19歳で結婚。病弱だった夫を助け、弘ひろ前さき大学付属農場、編み物の内職、保育所等で働き60歳で退職。以後は農協婦人部の無人販売や老人ホームの慰問活動に笹餅等をつくって協力。その味が評判を呼び、75歳で起業。手づくりの笹餅は、新聞・雑誌・テレビ等で取り上げられファンが増えた。平成23年、農林水産大臣賞受賞。写真/宮地 工

人物部門賞は、青森・津軽で笹餅製造業を営む桑田ミサオさんに決定した。とりわけ審査員が感銘を受けたのは、75歳にして笹餅製造の会社を起業したことだ。

桑田さんが週に2回、ひとりで600個手づくりする無添加の笹餅は非常に手間暇がかかっている。小豆の餡を炊き、もち米を挽いて、餅を包む笹の葉も近所に採りにいく。優しく心和むその味は新聞やテレビなどで紹介され、平成23年に農林水産大臣賞を受賞した。

「何より笹餅をつくることに楽しみを感じていらっしゃる。頑張り過ぎず、自分の体調を見ながらたんたんと仕事をされている姿が素晴らしい」(田沼さん)

「75歳での起業に驚かされます。しかも、それまでの仕事とまったく異なる、ステージを変えての挑戦です。人生100年時代のモデルとなる生き方で、私の人生のお手本にしたい」(松永さん)

「定年を気にしたり、会社にしがみついたりするのではなく、自分で新たな生き方を見つけられています。〝周囲の人の喜ぶ顔が見たいと思って始めた”という言葉に感動しました」(橋本さん)

綺麗な笹の葉だけを選り分けて手早く摘んでいく桑田さん。「餅を300個つくれば、笹も300枚必要なんです」(桑田さん)写真/宮地 工

日本最北の私鉄・津軽鉄道の車内で、手づくりした笹餅を手売りする桑田さん。今もイベント時には売り子を務めるという。写真/宮地 工

以上、「第16回 サライ大賞」の大賞と部門賞の発表でした。『サライ』は、シニア世代に優しい商品やサービスをこれからも応援していきます。次回の受賞もお楽しみに!

※この記事はサライ本誌2018年12月号より転載しました(取材・文/中澤雄二、撮影/末安善之)。

 

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