夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。金曜日は「美味・料理」をテーマに、福澤朗さんが執筆します。

文・写真/福澤朗(フリーアナウンサー)

講演などで地方都市を訪ねる際、夜は地元で人気の居酒屋へ行きたいものです。店を選ぶときは、まず宿泊先のホテルから歩いて行ける店を探します。地図を広げ、グルメサイトを覗き、店内写真をチェックします。若い人がワイワイ集まるところか、少人数で落ち着いた客層か、団体客で盛り上がるタイプの店か、店内写真を見ると大体の見当がつきます。そしてなんといっても、日本酒の揃いがいいかどうかのチェック。「地酒各種揃っています」というようなコメントがあれば最高ですね。店を決め、ガラっとドアを開けて店内へ。その時無意識にチェックするのが、店員さんの挨拶です。「いらっしゃい!」と威勢のいい声で呼び込まれると、ああ、いい店だなと思い、たくさん注文しようという気分になります。次にチェックするのは床とテーブル。べたついていると、甘ったるい日本酒を置いているのかなと、勘ぐってしまいます。

そしてまずはビール。ベルベットの綺麗な泡の生ビールが出てくれば大当たり、そうでなければ撃沈です。ここまで入店から10分か15分、店の良し悪しがわかってしまいます。

メニューを見て注文です。地方ですと何を頼めばいいかわからないとき、おすすめを頼むのはいかにもマニュアルっぽいですね。おすすめメニューというものには店の都合もあるわけです。今日はこれをたくさん入荷しちゃったので食べていただきたい、あるいは利益率が高い品なのでどんどん食べていただきたいなど。ですから福澤流テクニックとしては、店員のお兄さんorお姉さん(地元出身)に、「あなたなら今日は何を頼む?お兄さんの好きなもの教えて」と尋ねます。おすすめではなく好みを聞きます。そうするとほぼ間違いなく美味しいものにありつけます。

次は地酒を注文。この場合はメニューに書かれていない日本酒がある場合が多々あるので、それも店員さんに尋ねます。そこで日本酒の知識がある方が対応してくれるといいですね。俄然嬉しくなります。日本酒のスペックを確認し、何を飲んだかを忘れないためにボトルの写真を撮ります。日本酒と料理が運ばれてくる間、箸置きがない場合は、割りばしの箸袋で箸置きを作ります。子どものころから折り紙が好きでしたので、こういうことは得意なんです。一緒にいるスタッフの分も作ることがありますよ。そうこうして、長居はせずにだいたい2時間くらいで引き上げます。

さて、ちょっといやらしい話ですが、テレビに出ている者として、「福澤出し」のときと、「福澤隠蔽」の時があります。店のドアを開けた時に大将が福澤だと認識してくれて、居心地がよさそうだと判断するとカウンター席に。サービスを期待したりして…。これ、福澤の悪用ですが。反対に、ドアを開けた時に、酔客で賑やかだったりするときは、福澤を隠蔽し、奥の方の端っこの席でひっそり飲みます。このとっさの判断も福澤流です。

文・写真/福澤朗(フリーアナウンサー)
昭和38年、東京都生まれ。昭和63年、早稲田大学第一文学部を卒業し、同年、日本テレビ入社。在局中はアナウンサーとして、数々のヒット番組に出演。また「ジャストミート」「ファイヤー」等の流行語も生み出した。2005年7月、フリーアナウンサーに。趣味は、日本酒、鉄道、和菓子屋巡り。特技は卓球。

 

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