【私のお気に入り~第77回】
四谷「後楽寿司 やす秀」
まだ30代の若手気鋭のすし職人、綿貫安秀(やすみつ)さんは、毎日、父親と並んで漬け場(カウンター内)に立って鮨を握っていますが、数年前、自分の仕事がしやすいように店を改装しました。
「まだまだ勉強中です」と言いながら、このところの進化には目覚ましいものがあります。
まず、握りの形がより美しくなりました。
昔から、握り鮨は「扇の地紙の形に握れ」と言われてきました。握りを横から見て流線形になるように、というわけです。酢めしが団子状に丸くてもいけない、鮨だねが舞妓さんの帯のようにだらりと両脇に垂れ下ってもいけない。彼の握りは、まぐろもこはだもどれもまことに美しい姿をしていて、食欲をそそります。
さらに、そのこはだの締め加減が上々です。程よく酢と塩で締めてあり、水っぽさ、生臭さは全く感じません。
蒸しあわびもその香りの良さは鼻をくすぐり、あわびの持ち味を最大限に引き出しています。
つまり、すべてに「仕事のしてある」握り鮨なんです。あと、必要なのは、この「仕事のしてある」握り鮨を評価してくださるお客様ではないでしょうか。彼の握る鮨をつまめば、いっぺんに気に入ること請け合いと思いますが。
■後楽寿司 やす秀(みつ)
http://www.kouraku-sushi.jp