京料理や野菜、湯葉、豆腐、和菓子など京の食材が上質さを保ちながら発展するのは、地下深くにたゆたう清らかな水の力といっても過言ではない。古から都を潤してきた京の水は、今も満ちて京の食を高めていく。

木山|水との出会いから生まれた清廉で心地よい水懐石

「季節によっても出汁の出方は違うので、水と対話し分量なども調整して出汁をひきます」と木山さん。

「開業前に井戸を掘ったら、まろやかな水が出たんです。これをうちの料理の主軸にしようと思いました」と話すのは、店主の木山義朗さん(43歳)。岐阜市で生まれ、京都の料亭『和久傳』に入店。JR京都駅構内『京都和久傳』の料理長として腕をふるった。2017年に独立し、『木山』を開業する。

木山さんが「まろやか」と評するこの水は、調べてみると茶道家元も使う小川通の水脈だった。京都の地下水のなかでもとりわけやわらかい超軟水なので、昆布出汁がよくでるのだ。

主役のお椀。この日は、金目鯛と海老芋を椀種に三つ葉を添える。金目鯛の脂が出汁に溶け出し、えもいわれぬ旨味が広がっていく。
炊き合わせの「れんこん蒸し」。すりおろした蓮根に卵白を合わせて蒸し、鰹出汁を満たす。
ご飯物の一品、煮麺(にゅうめん)。追い鰹をした出汁で素麺を軽く煮て、毎朝、京都・美山から届く平湯葉と山葵を添える。料理は夜のコース3万250円~の3品。昼は1万4500円~。

「コースの最初に白湯をお出しし、小吸い物を挟んで、主役のお椀を召し上がっていただきます」

お椀を出す際には、客前で鰹節を削り、出汁をひく。できたての出汁は、まずは味をつけずに客の前に。「昆布と鰹節だけでひいた出汁が、どれほどの旨味を蓄えているかを知ってほしいから」だという。コースは、お造りや焼き物、酢の物なども加えた8〜10品とご飯物4〜5品。出汁を用いた料理も季節によって数種用意する。

コースの最初に出される白湯。木山さんの発想は、この水から生み出されるといえる。
鰹節削りも客前で。鹿児島県枕崎の保管庫でモーツァルトを聴いて長期間過ごした本枯節は、ほどよく熟成したところで京都に届く。出汁に使うのはその本枯節と荒節の2種。

客は、最初の白湯から最後の抹茶まで、絶えず水の味を意識する。主役のお椀はもちろんのこと、炊き合わせも煮麺も、口にするだけで心身が澄む清廉な味わい。水と食との最良の出合いを、まざまざと思い知らされるのだ。

玄関前にある水を湛えた手水鉢。井戸水を感じ『木山』の時間が始まる。

木山

京都市中京区絹屋町136 ヴェルドール御所102
電話:075・256・4460
営業時間:12時~13時、18時~19時30分(いずれも最終注文)
定休日:不定
交通:地下鉄烏丸線丸太町駅下車、徒歩約8分

『サライ』2024年10月号は特別付録『【mont-bell×サライ】特製万年筆』付き。

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2025年
1月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店