『サライ』10月号の大特集は「選りすぐりの京都」。日本の大乗仏教の基礎をつくった僧・最澄ゆかりの古寺を美しい紅葉風景とともにご案内します。
また、京都を訪れる楽しみのひとつである美食は「カウンター」に注目。今年オープンした新進気鋭の店を中心に、和食、フレンチ、鮨に天麩羅と、秋の味覚を堪能できる名店をご紹介します。
今回は、「カウンター料理の醍醐味」の中から、『たん熊北店』を紹介します。

たん熊北店 京都本店 中京区

開業時から変わらないカウンター席。当初はカウンター前の仕切りも木製だったという。真っ白なカバーがかかった椅子に座ると、自ずと背筋が伸びる。

ぐじ(甘あま鯛だい・右)の若狭焼き(1切れ4400円~)とマナガツオ(左)の味噌漬け(1切れ3850円~)の焼き物。ゆで卵、松葉銀杏などと共に、冷めないよう炮烙皿に盛って供される。

「板前割烹の始まりは、昭和2年(1927)に祇園富永町に開業した『浜作』さんだと聞いています」と話すのは、『たん熊北店(きたみせ)』3代目の栗栖正博さん(65歳)。『たん熊』は、その1年後の昭和3年(1928)、高瀬川のほとりに同様の板前割烹、即ちカウンター席もある割烹を開いた。

「割烹以前、旦那衆が料理を味わう場所といえば料亭でした。それも、現在のように料理人が店主ではなく、実業家が出資してつくった店がほとんど。立派な館に日本庭園があり、贅沢な室礼の店ばかり。さすがに料理人が最初からそんな店は持てない。そのような事情もあって、坪数が小さいカウンター店になったともいえます」

料理人が店を持つ背景として、昭和天皇の即位や第一次世界大戦後の好景気もあった。さらに、鉄道網が発展したことで、新鮮な魚を京都へ運ぶことができるようになった。当時、京都駅前には、市が立っていたそうだ。鮮魚を客前で調理してすぐに出す、カウンター割烹が脚光を浴びることとなる。

「料亭では、お造りや焼き物、煮物と料理を一通り味わいますが、割烹ならば、“今日は何が美味しい?”と尋ねて、好きなものをお腹の具合に合わせて注文できます。豪華な料理を食べつくしてきた食通とされた人たちにとっては、その方が有り難かったのでしょう」

実際に、『たん熊北店』にも谷崎潤一郎や吉井勇といった味にうるさい文人墨客がやってきた。初代の栗栖熊三郎はそんな客を喜ばせたいと奮闘し、「京料理の神様」と呼ばれるまでになる。

旬の味を尋ねて注文を

現在も、多少の修理や改装を施しているものの、店の構えは当時のまま。白いカバーがかけられたカウンター席に歴史を感じる。

「料理人と向かい合えるカウンターで食事をするのですから、旬の味や調理法について相談するのが一番です。夏から秋にかけて脂が乗る鱧も、造りや落としだけでなく、様々な料理があります。初秋なら好みの加減で火を入れるしゃぶしゃぶをおすすめします」

鱧と松茸のしゃぶしゃぶは、鱧の骨の出汁と一番出汁を合わせた濃い旨味が要。鱧や松茸をさっとくぐらせて食べた後、水菜や湯葉豆腐にその出汁を含ませ味わう。

鱧と松茸のしゃぶしゃぶ1人前6600円~(写真は2人前)。
鱧、松茸、水菜、湯葉、豆腐を盛りつけた皿とともに、出汁を張った鍋がカウンターに。自分のペースで味わいたい。

店ごとに得意料理もあるから、わからなければ、遠慮なく聞くのが美味しいものに辿り着く近道。

『たん熊北店』では、名物のすっぽん鍋を目当てに訪ねる人も多い。

「奥様の誕生日など、あらかじめ来店目的をお伝えいただければ、お祝いの料理や演出も考えさせていただきます」と栗栖さん。

老舗のもてなしを堪能したい。

『たん熊北店』3代目の栗栖正博さん。立命館大学を卒業後に入店。自ら包丁を握り客をもてなす。京都料理界の重鎮である。

ん熊北店 京都本店

京都市中京区西木屋町通四条上ル紙屋町355 電話:050・3503・6990 営業時間:12時~15時(最終注文13時30分)、17時30分~22時(最終注文19時30分)定休日:水曜、不定休あり 料金:昼3850円~、夜1万6500円~(ともにサービス料別途) カウンター6席、要予約。交通:阪急電鉄京都河原町駅より徒歩約5分

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