江戸時代から続いてきた鮨、天ぷら、蕎麦、そして昭和の時代に発達した焼き鳥は東京の食文化。老舗から新店まで、足を運びたい店を紹介する。

フランス料理と融合した新感覚の焼き鳥コース

神保町 五木田 神保町

手羽先の中には烏賊墨のパエリアが入っている。表面の皮はパリパリした食感で、清々しい香りのキーライムを絞って食べる。

本格的なフランス料理の世界を歩んできた料理人、五木田祐人さん(38歳)は、2年前に焼き鳥をメインにしたレストランを開いた。

鶏の白い肉は温度の高い炭火で焼き、鴨などの赤い肉やレバーに代表される内臓は炭よりも温度が低い薪火でしっとりと焼くという具合に、熱源を使い分ける。

そして、仕上げにタレではなく、フランス料理の手法を使ったソースをかけるのがこの店の流儀だ。鶏肉の間に葱を挟んだ葱間には洋酒を使ったソースを、つくねには赤ワインを使ったソースを、という具合である。口にすると、串という形で提供されるものの、フランス料理の小さな一皿を食べているような感覚と満足感がある。

比内地鶏の胸肉と海老を重ねた串には、海老の殻や頭からとった出汁で作るアメリケーヌソースがかかる。
葱間は比内地鶏のもも肉を使用。洋酒のベルモットをふんだんに使ったアルベールソースがかかる。
鶏の様々な部位を混ぜ合わせ、柔らかくこねて作るつくねは、網脂で包んで焼く。赤ワインソースがかかる。

そうなれば、コースの流れに合わせて白から赤へと、グラスでワインを注文したくなる。

普通の焼き鳥店では生野菜を注文できる店は少ないが、この店では串の前に魚介を使ったサラダが出る。

8200円のコースで出されるサラダ。この日は鰹のたたきと多種多彩の野菜。心地よい酸味のビネグレットソースが絡み、食が進む。

コースの後には別注文になるが、味醂や醤油を使ったそぼろご飯やグリーンカレー、塩ラーメンなどが740円から用意されている。神保町の古書店巡りの後に、ゆっくり立ち寄りたい。

神保町 五木田

東京都千代田区西神田2-4-9 第二錦水ビル1階
電話:03・6272・4365
営業時間:17時30分~21時30分(最終入店) 
定休日:月曜、月2回日曜 22席。個室あり。コース6800円~。

東京メトロ・都営地下鉄神保町駅から徒歩約5分。JR水道橋駅から徒歩約7分。

※この記事は『サライ』本誌2023年9月号より転載しました。取材・文/安井洋子、浅妻千映子 撮影/平松唯加子、福田栄美子

 

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