第77回日本放送協会放送文化賞の受賞者のひとり、里見浩太朗さん。

ライターI(以下I):大河ドラマファンにとって、嬉しいお知らせがありました。

編集者A(以下A):数々の時代劇、そして大河ドラマに出演されてきた俳優の里見浩太朗さんが、第77回日本放送協会放送文化賞の受賞者のひとりに選ばれ、先日、受賞者代表として取材会が行なわれたので、行ってきました。

I:NHK主催の日本放送協会放送文化賞ですが、放送文化全体を鑑みての功績が称えられるわけですから、例えば『水戸黄門』や『忠臣蔵』など、他局で放送された作品についても含まれているんですよね。懐深い賞だなと思いました。

A:今回の取材会では、里見さんがご自身の俳優人生の始まりから詳しく語ってくれました。最初は、歌手を目指していたそうです。それがひょんなことから、東映のオーディションを受けることになり、さらに現代劇か時代劇か選ぶ段で、「京都に食事付きの寮があったから」京都での生活=時代劇を選んだとおっしゃっていました。

I:昨年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』にも須原屋市兵衛役で出演していましたが、御年89歳なんですよね。記憶力も素晴らしいですし、かくしゃくとしていらっしゃって、まだまだこれから、という感じですね。

A:ご自身はお元気で、だいぶ下の後輩の俳優さんたちとゴルフなど楽しまれているそうですが、一緒に歩んできた仲間たちやちょっと下の後輩たちは、もうほとんどいなくなってしまったと、嘆いていました。

仲良かった後輩はもう、ほとんどいないんです。それがとても悔しい。一番親しかったのは山城新伍、松方弘樹、千葉真一、梅宮辰夫、西郷輝彦といった面々ですが、皆ついこの間までテレビに映っていました。ところが今はみんな、あの世に逝っちゃったんです。なんでおまえ達、逝っちゃったんだよって本当に言いたいです。

I:大河ドラマにも出演した大御所たちの名前が挙がりましたね。

A:お見舞いに行きたくても、できなかったこともお話されていました。

(仲間たちが)入院している間に、ひとりひとりに「顔見に行くぞ」と言ったのですが、「いや先輩、来ないでください」と言われてしまうんです。ほとんどがそうでした。「来ないでください」という声がとっても悲しかった。今でも思い出して、涙が出てきます。声が聞こえてきます。なぜもっと自分を大事にして、頑張ってくれなかったんだ、と。

I:切ないですね……。みな、病気で衰えた姿を見せたくなかったのだと推察します。

A:里見さんは、最近、仲良くしている方々についてもお話されていました。

西岡徳馬くんとか、神田正輝くんとか柴田恭兵くんと一緒にご飯を食べたりゴルフをやったりして遊んでいます。本当に今頑張っている若い俳優さんたちは、心と体の健康、両方を頑張って自分を作っててほしいですね。

I:里見さんみたいなレジェンドが、これからもどんどん長く活躍してくれることに期待ですね。

A:最近はオンデマンドなどで古い時代劇放送を気軽に見ることができるようになった反面、地上波では大河ドラマくらいしか時代劇が見られない時代です。時代劇があまり作られなくなった背景も、赤裸々に話してくれました。

一番の原因は予算。現代が舞台であれば、仕出しの俳優さんも普段着で出ることができるけれど、時代劇ともなると、仕出しの俳優の皆さんに至るまですべて着物などの衣装や鬘などが必要になってくる。我々は諦めるしかない。

I:仕出しというのは、舞台用語で、役名の付かない役とそれを演じる俳優さんのことだそうです。里見さんの長い俳優人生の中で、あえて1本挙げるとしたら、どの時代劇が一番思い出に残っているのでしょうか、という質問も出ました。それに対して、1985年に日本テレビ系列で放送された「年末時代劇スペシャル」のエピソードを挙げてくれました。

日本テレビの重役さんから、「今度、『忠臣蔵』をやるよ」と言われまして、「誰がやるんですか?」と尋ねたら、「君だよ」と。「え? 私? 『忠臣蔵』の大石内蔵助をやらせてくれるんですか?」と驚いて聞き返しました。ちょうどその時、私は50歳でした。それまで、東映の時代劇といえば、片岡千恵蔵先生、市川右太衛門先生、月形龍之介先生、あとから入ってきた大河内傳次郎さん、嵐寛寿郎さんといった大御所がいらして、萬屋錦之介さん、大川橋蔵さん、東千代之介さん、伏見扇太郎さん、尾上鯉之助さんなど歌舞伎から来た俳優さんがいっぱいいたのです。私が二十歳でこの世界に入って30年経って、ふと振り返ってみたら、こうした時代劇スターの皆さんがほとんど誰もいないのです。その頃には時代劇が映画からテレビの時代になっていて、それでテレビで『忠臣蔵』をやることになったのですが、そのオファーほど嬉しかったことはなかったですね。いろんな先輩方の大石内蔵助を見せていただきましたが、誰も見本にしてはいけないと自分に言い聞かせて挑みました。年末や、つい昨日(2月15日)も『忠臣蔵』の再放送がありましたが、今、自分で見ましても、50歳の里見浩太朗ではないですね。なぜか知らないけど、すごく大人の、すべてを知り尽くした大人の俳優……自分で言ったらおかしいですが、里見浩太朗っていい役者だなと思いました(笑)。あの6時間の『忠臣蔵』が私にとっては絶対に忘れることのできない時代劇ドラマ作品ですね。

A:偶然なのですが、CSで再放送していた1985年の『忠臣蔵』を見たばかりのタイミングでした。かつては、日本テレビの年末時代劇スペシャルだけではなく、テレビ東京の「12時間超ワイドドラマ」など民放でも時代劇が数多く編成されていました。1981年のTBS『関ヶ原』はテレビ歴史ドラマの金字塔ともいうべき作品です。1971年には現在のテレビ朝日も大河ドラマに伍す熱量の『大忠臣蔵』という作品を制作しています。

I:2時間ドラマ全盛の1980年代にはフジテレビで『時代劇スペシャル』という2時間枠があったそうですね。

A:もうあのような時代は二度と戻ってこないのでしょうか。『大岡越前』『水戸黄門』『江戸を斬る』『木枯らし紋次郎』『銭形平次』『暴れん坊将軍』……そのほか多数の作品が民放から生まれたんですけどね。

I:時代劇は日本のひとつの文化なんですけどね。さて、第77回日本放送協会放送文化賞受賞者は、里見さんのほか、松任谷由実さん、野沢雅子さん、桂文珍さん、玉木幸則さん、相澤清晴さんです。贈呈式は、3月13日に都内で行われる第101回放送記念日記念式で行なわれるそうです。みなさん、おめでとうございます!

●編集者A:書籍編集者。かつて編集した『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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