取材・文/池田充枝
先の東京オリンピックに合わせて1964年10月、「オリンピック東京大会組織委員会協賛芸術展示 浮世絵・風俗画名作展」が、国際浮世絵学会(当時、日本浮世絵協会)の主催で開催されました。そして再び東京にオリンピックがやってくる時期に、浮世絵の素晴らしさを紹介する展覧会が開かれています。(2020年1月19日まで)
本展は、国内のほか欧米の美術館、博物館、個人コレクションの中から、国際浮世絵学会の監修のもと、保存状態のよい優品を集めています。
本展の見どころを、東京都江戸東京博物館の学芸員、小山周子さんにうかがいました。
「2014年に第一弾『大浮世絵展』を開催し、浮世絵の通史における代表作を紹介しました。今回、その第二弾となる本展で、歌麿、写楽、北斎、広重、国芳という5人の人気浮世絵師に注目し、その代表作を展示します。
喜多川歌麿は、寛政5年(1793)頃、大首絵を打ち出し、美人画の絵師としての地位を確立しました。『難波屋おきた』は浅草の茶屋の看板娘で、おきたを目当てに大勢の人が押し寄せたそうです。普段着の給仕姿ですが、歌麿の筆致により凛とした美しさが描き出されています。
謎の絵師・東洲斎写楽は、寛政6年(1794)5月に役者大首絵28枚で鮮烈なデビューを果たしました。『市川蝦蔵の竹村定之進』は、当代随一の名優五代目團十郎こと蝦蔵の風格を堂々と描きます。背景の黒雲母摺により、大迫力の画面です。
葛飾北斎の『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』は世界で最も有名な作品とも言われています。富士山が大きくせり上がった大波にのまれてしまいそうな大胆な構図。保存状態の良いミネアポリス美術館所蔵品は、東京会場では12月15日までの展示です。お見逃しなく。
北斎に刺激を受け、独自の風景画を確立したのが歌川広重です。大ヒットとなった保永堂版『東海道五拾三次』でも情趣豊かな作品が展開します。なかでも『蒲原 夜之雪』は宿場町の雪景色を描いたものですが、駿河湾に面して温暖な蒲原には、ほとんど雪は降りません。意表をつく内容ですが、積雪の木版表現は見事なものです。
そして最後に、歌川国芳の武者絵と戯画を紹介します。国芳は3枚続きの大画面を活かしダイナミックな構図や色使いを採用しました。『相馬の古内裏』でも娯楽性を追及し、庶民に大人気となった画風がうかがえます」
日本が世界に誇る浮世絵の大傑作が集結!!ぜひ会場でご堪能ください。
【開催要項】
大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演
会期:2019年11月19日(火)~2020年1月19日(日)※会期中展示替えあり
会場:東京都江戸東京博物館
住所:東京都墨田区横網1-4-1
電話番号:03・3626・9974(代)
展覧会公式ホームページ:https://dai-ukiyoe.jp
開館時間:9時30分から17時30分まで、土曜日は19時30分まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし2020年1月13日は開館)、年末年始(12月28日~1月1日)
巡回:福岡市美術館(2020年1月28日~3月22日)
愛知県美術館(2020年4月3日~5月31日)
取材・文/池田充枝