取材・文/池田充枝
世界で最もよく知られる名画「叫び」を描いた巨匠、エドヴァルド・ムンク(1863-1944)。
オスロの美術学校に学んだ後、パリやベルリンと故郷を行き来しながら活動し、次第に人間の内面をあらわにする独自の表現を確立していきました。
「私の芸術は、自己告白である」と述べているように、家族の死、女性との愛憎など、内面の葛藤を作品に投影してきたムンクは、晩年ナチスにより頽廃芸術の烙印を押される一方、ノルウェーの国民的画家と称えられます。そして戦禍の最中、気管支炎を患い膨大な作品に囲まれながら、孤独な生涯を終えました。
没後、遺言に従ってムンクが所有していた全作品はオスロ市に遺贈されました。
オスロ市立ムンク美術館が誇る世界最大のコレクションによるムンクの大回顧展が開かれています。(2019年1月20日まで)
本展は、約60点の油彩画に版画などを加えた約100点により、約60年にわたるムンクの画業を辿ります。なお、複数描かれた「叫び」のうち、オスロ市立ムンク美術館が所蔵するテンペラ・油彩画の《叫び》は今回が待望の初来日となります。
本展の見どころを、東京都美術館の学芸員、小林明子さんにうかがいました。
「本展覧会は、ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの回顧展です。画家の故郷、ノルウェーのオスロ市立ムンク美術館が誇る世界最大のコレクションを中心に、初期から晩年の作品を通じて、画家の生涯と作品を辿ります。
本展は、ムンクが生涯を通して描き続けた自画像をまとめて紹介する章から始まります。展示の冒頭から、ムンクとはどのような画家だったのかということに、思いを巡らせることになるでしょう。ムンクにとっての自画像は、新たな表現を試みるための絵画実験の場であり、あるいは戦略的に自己演出するための手段でもありました。各年代の画家の自画像のほか、カメラで撮影したセルフポートレートもあわせて紹介しています。
ムンクと聞いて誰もが思い浮かべる「叫び」。今回の展覧会には、現存する複数の「叫び」のうち、テンペラと油彩による後年の作品が出品されます。目と口を大きく開き、両手で左右の耳をふさいで立ち尽くす人物と、フィヨルドの果てに広がる真っ赤な日没。脳裏にやきつく鮮烈な色彩とフォルムを、ぜひ間近でご覧ください。
自画像に始まり、9章からなる本展では、愛や死を主題とする初期の代表作から、故郷の自然をとらえた美しい風景画、肖像画、明るい色が彩る晩年の作品まで、ムンクの多彩な作品をご覧いただけます。「《叫び》の画家」の新たな一面を、この機会にぜひ発見してください。」
ムンクのすべてが詰まった展覧会です!! ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
ムンク展―共鳴する魂の叫び
会期:2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
特設WEBサイト:https://munch2018.jp
開室時間:9時30分より5時30分まで、金曜日、11月1日(木)・3日(土・祝)は20時まで(入室は閉室30分前まで)
休室日:月曜日(ただし11月26日、12月10日・24日、1月14日は開室)、12月25日(火)・12月31日(月)、1月1日(火・祝)・15日(火)
取材・文/池田充枝