
眼科医・山口康三さんは、目の病気の多くは生活習慣病であり、目を健康にするカギは「血流をよくする」ことにあると言います。そのため、通常の眼科治療とともに、食事や運動、ストレスケアをはじめとする生活習慣を改善することで、より大きな効果を得ることができるのだそうです。
山口さんの著書『緑内障・白内障は血流の改善でよくなる』(徳間書店)の中から、おすすめしたい「目の健康」を維持するためのポイントを紹介。今回は、目の健康を保つための腸内環境の整え方を取り上げます。
目の生活習慣病の3大原因
目の血流を悪くする生活習慣のなかで、特に弊害が大きいのは、次の3つです。
・過食(食べすぎ)
・運動不足
・腸内環境の乱れ
腸内環境の乱れがもたらす害
腸内には善玉菌、悪玉菌、日和見菌という腸内細菌が棲んでいます。
このうち悪玉菌が増殖すると便秘になって宿便がたまり、腸内の腐敗が進むことで血液を汚してしまいます。汚れた血液が全身を巡り、目にも流れて目の細胞の健康を損ねてしまうのです。
また、便秘によって腸に有毒物や老廃物がたまると、腸に微小炎症(慢性炎症の芽)を引き起こします。
微小炎症が起こっている部分は、血流が悪くなり、血液はドロドロになります。すると、さらに血流が悪くなるという悪循環が起こります。
白内障の患者さんは、便秘傾向が強くみられ、患者さんの眼底を見ると、眼動脈の血液がドロドロになっているのが確認できます。
近年では、目と腸には関係があり、腸内環境が目に影響を与えていることを示す研究も報告されています。
腸内環境と目の病気の関係
脳と腸の関係は「腸脳相関」として知られており、神経系、免疫系、内分泌系を通じて密接につながっていると考えられています。腸内環境は全身の健康に影響を及ぼすことから、目の健康にも、腸内環境が大きな役割を果たしていると考えられます。
腸と目の病気に関する研究では、腸内細菌のバランスが乱れると、炎症性の疾患が起こりやすくなり、黄斑変性のリスクが高まるという報告があります。特に悪玉菌が増えると炎症が悪化する可能性が指摘されています。
糖尿病の合併症に糖尿病網膜症があります。糖尿病の人は腸内細菌のバランスが乱れやすく、これが血糖値のコントロールや炎症に影響を与え、網膜症の進行を促している可能性があると考えられています。
また、腸内環境が乱れると涙の分泌が低下し、ドライアイの原因になる可能性があり、腸内細菌が作る代謝産物が涙腺の機能に影響を与えることも示唆されています。
このように目と腸は、腸内細菌を介して密接にかかわっています。
腸を正常化するコツ

では次に、腸を正常化する具体的な方法を説明しましょう。
少食を実践する
食べすぎると、消化しきれなかった食べ物のカスが腸に長くとどまって腐敗し、悪玉菌の増殖や有害物質の発生を促し、血液を汚してしまいます。
腸を正常化するには、この逆を行けばいいのです。すなわち少食を徹底すれば、腸内に悪玉菌のエサとなる食べカスがたまることもなくなります。
また、空腹時間が続くと、モチリンというホルモンが分泌されます。モチリンは、腸のぜん動運動を促す働きがあり、食べたものの排泄がスムーズになり、便の停滞を防ぐことができます。
玄米を食べる

玄米は食物繊維が豊富な食品です。食物繊維は善玉菌のエサになるので、主食を玄米にすることは、腸内環境の正常化に大いに役立ちます。玄米が食べづらいという人は、分づき米や雑穀米にしてもいいでしょう。
善玉菌が好きなタマネギとゴボウを積極的にとる
腸内環境をよくする食べ物として、積極的にとりたいのは野菜や海藻です。特に私がお勧めしたいのは、タマネギとゴボウです。
タマネギとゴボウには、善玉菌の好物であるオリゴ糖と水溶性食物繊維が豊富に含まれています。また、ゴボウには、便のカサを増やす不溶性の食物繊維も豊富ですし、タマネギには血液をサラサラにするケルセチンという成分も豊富に含まれています。
毎日の食卓に積極的にタマネギとゴボウをとりいれましょう。食べる目安は、1日にタマネギなら2分の1個、ゴボウなら3分の1本弱です。
水分を十分にとる
腸から栄養が吸収されるときには、十分な水分が必要になります。水分不足になると腸の働きが低下して、便秘になります。
夏は汗をかくため、特に水分不足に陥りがちです。1時間に1回は水分を補給するように心がけましょう。
高脂肪食をなるべくとらない
肉類は、悪玉菌のエサになり、悪玉菌の増殖を促します。動物性たんぱく質をとるなら、肉ではなく魚介類をお勧めします。
肉類を多くとると、腸内で有害な物質が生じやすくなり、腸の微小炎症が促進されます。魚介類は、炎症を抑える働きがあるので、その点でもお勧めです。
運動をする
運動不足は腹筋を衰えさせ、便を押し出す力を低下させます。また、体を動かさないと腸への刺激が減り、腸のぜん動運動が弱くなって便秘になりやすく、腸内環境の悪化を招きます。ウォーキングなどを行うようにすると、腸の動きもよくなり、腸内環境を正常化することができます。
ストレスをコントロールする
ストレスを抱えていると、腸の働きを調整している自律神経が乱れ、腸内環境に悪影響を与えます。
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緑内障・白内障は血流の改善でよくなる 黄斑変性・糖尿病網膜症・ドライアイにも効果
著/山口康三
徳間書店 1,760円(税込)
山口康三(やまぐち・こうぞう)
1981年、自治医科大学医学部卒業。横浜市立市民病院、神奈川県立厚木病院、神奈川県立藤野診療所勤務を経て、91年に栃木県下野市に回生眼科を開業。日本眼科学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本綜合医学会副会長。食事や運動、睡眠などで綜合的に対処する「目の綜合医学」を考案・確立。著書に『緑内障・白内障は朝食抜きでよくなる』(マキノ出版)、『[山口式] 自力で白内障・緑内障・黄斑変性を治す本』(主婦の友社)などがある。
