取材・文/池田充枝
ジョルジュ・ルオー(1871-1958)は、パリの下町で生まれ、14歳でステンドグラス職人に徒弟奉公に出ますが、画家を志して19歳で国立美術学校に入学。象徴主義のギュスターヴ・モローの薫陶をうけます。
モローが1898年に死去したのちは、精神的な苦難の時期を迎えますが、カトリシズムを支えに乗り越えます。1902年頃より社会の底辺の人々の悲哀や社会の矛盾への憤りを主題とする独自の画風を切り開きました。
その後、作品は次第にキリスト教信仰に根ざした穏やかなものとなり、晩年には絵の具を厚く塗り重ねた独特の油彩表現によって、慈愛や静謐さをたたえた人物像や風景画を多く描きました。
20世紀最大の宗教画家とも呼ばれ、死去に際してはフランス政府による国葬が執り行われました。
ルオー芸術の真髄が詰まった展覧会が開かれています。(12月9日まで)
開館15周年特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデル二テ(会場:パナソニック 汐留ミュージアム)
本展は、開館15周年を記念した特別展で、ヴァチカン美術館が初めて日本に出品する4点を公開するほかポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館から5点、ほかにルオー財団や個人から代表作を含む約40点が来日。国内外の名品も合わせて、油彩、水彩、版画、資料など約90点を展観します。
本展の見どころをパナソニック 汐留ミュージアムの学芸員 萩原 敦子さんにうかがいました。
「見どころは大きく3つあります。
一つ目は、ヴァチカン美術館が初めて日本に出品するルオーの作品4点を公開することです。
ルオーとカトリック教会の総本山であるヴァチカンには繋がりがあり、生前ルオーは教皇に作品を寄贈し、画家の没後は家族らが作品をヴァチカンに献納しています。本展では、ルオーの聖なる芸術を考える上で重要でありながら、これまで着目されてこなかったヴァチカンゆかりの油彩3点《聖顔》、《パックス(平和)》、《秋 または ナザレット》そして七宝作品の《聖心》をご覧いただけます。
二つ目はパリに所蔵されている《ヴェロニカ》や《聖顔》、《キリストとの親しき集い》など、ルオーの代表作、特に晩年の傑作の数々が集結します。
ポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館から、《聖顔》、《ヴェロニカ》、《受難(エッケ・ホモ)》、《エジプトへの逃避》、《キリスト教的夜景》の5点が出品。また、パリのルオー財団や個人からなど代表作を含む約40点が来日します。
そして三つ目は、ルオー芸術の真髄である聖なる芸術をテーマとし、画家が目指した最も美しい愛のかたちを存分に紹介します。
テーマを聖なる芸術に定め、敬虔なキリスト教徒であり、制作した全ての作品に信仰を込めたルオーの絵画の真髄を取り上げる王道のルオー展です。ルオーが、革新的な造形表現で描く愛に満ちた美しい世界を、油彩、水彩、版画、資料等約90点を通してお楽しみいただけます」
パリから、ヴァチカンからルオーの傑作が集結する展覧会です。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
開館15周年特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデル二テ
会期:2018年9月29日(土)~12月9日(日)
会場:パナソニック 汐留ミュージアム
住所:東京都港区東新橋1-5-1パナソニック東京汐留ビル4階
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://panasonic.co.jp/es/museum/
開館時間:10時から18時まで、10月26日・11月16日は20時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:水曜日(ただし11月21日・28日、12月5日は開館)
取材・文/池田充枝