取材・文/池田充枝
フランスの画家ジョルジュ・ブラック(1882-1963)は、20世紀初頭、キュビスムの創始者としてピカソとともに絵画に革新をもたらした重要な画家です。
キュビスムは、ルネサンス以来の西洋絵画の伝統である遠近法や明暗法を用いて現実を描写するという手法をとらず、対象物の立体的な全容を複数の角度で平面上に表現する「分割」と「再構築」という手法を取り入れました。
そんなキュビスムの創始者ブラックが晩年に取り組んだのが「メタモルフォーシス」シリーズです。このシリーズは、ブラックが1961年から63年に制作した一連の平面と立体作品の総称であり、個々のモチーフが素材や技法を変えながら立体作品へ、装飾芸術へと「変容」する作品群です。
このブラックのメタモルフォーシス・シリーズの全容を日本で初めて本格的に紹介する展覧会《ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容―メタモルフォーシス》が、東京のパナソニック 汐留ミュージアムで開かれています(~2018年6月24日まで)。
本展では、絵画から彫刻に始まり、ジュエリー、陶磁器、ステンド・グラスなどの装飾芸術に至るさまざまな形態の作品、画家ブラックの変遷を辿るための貴重な絵画作品が展示されています。
本展の見どころを、パナソニック 汐留ミュージアムの学芸員、宮内真理子さんにうかがいました。
「ジョルジュ・ブラックの晩年の境地「メタモルフォーシス」シリーズを日本で初めて本格的に展示する展覧会です。これまで日本ではほとんど紹介されてこなかった、ブラックが晩年に取り組んだ一連の作品群がまとまった形で来日します。絵画を含めておよそ100点が一堂に会します。
ブラックの立体への挑戦を、煌びやかなジュエリーや華麗なアメシスト彫刻などを通して紹介します。手に触れられる立体物に惹かれ、また素材としての貴石や貴金属に魅了されていたといわれるブラック。そのジュエリー作品に加え、ガラス彫刻、陶器、タピストリー、ステンド・グラスの他、様々な形態に変化した作品をご覧いただけます。
また、キュビスム時代の油彩を含む絵画、グワッシュ(ゴムや蜜などで溶解した絵の具で描く水彩画)、版画など平面作品も出品します。貴重なブラックのキュビスム絵画《静物》が出品されるほか、初期のグワッシュ画《モンソー公園》、そして絶筆といわれる《青い鳥、ピカソへのオマージュ》も登場します」
キュビスムの巨匠が到達した「変容」の境地は美麗そのもの。ぜひ間近でご鑑賞ください。
【開催要項】
ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容―メタモルフォーシス
会期:2018年4月28日(土)~6月24日(日)
会場:パナソニック 汐留ミュージアム
東京都港区東新橋1-5-1パナソニック東京汐留ビル4階
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://panasonic.co.jp/es/museum
開館時間:10時より18時まで(入館は17時30分まで)
休館日:水曜
取材・文/池田充枝