選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
こんなに美しいギター曲が、まだまだ世の中にはあったのだ! クラシック音楽における古典的なギター作品の紹介者として優れた仕事を重ねているギター奏者の益田正洋の新しいアルバム『モレーノ=トローバ ギター作品集』を聴いて、深い感銘を受けた。
1891年にマドリードで生まれ、1982年に同地で91歳で亡くなったモレーノ=トローバは、20世紀スペインを代表する作曲家のひとりである。もともとはサルスエラというスペインの郷土色豊かな歌芝居を活動の舞台としていたモレーノ=トローバが、名ギタリストのセゴビアの勧めで書くようになったギター曲の数々は、スペイン的な活気あるリズムに加え、ロマンティックな詩情にも満ち溢あふれている。
益田の演奏は、澄んだ音色と歌心で、これらの作品の魅力を余すところなく聴き手に伝えてくれる。(>>こちらで試聴できます)
【今日の一枚】
『モレーノ=トローバ ギター作品集』
益田正洋(ギター)
2016、17年録音
発売/フォンテック
電話/03・3393・0183
商品番号/FOCD-9764
販売価格/2400円
文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2018年5月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。