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盲導犬について知っておきたいいくつかの大切なこと

取材・文/わたなべあや

「ほじょ犬(身体障害者補助犬)」は、目や耳、手足など体に障害のある方の生活をお手伝いする犬で、国が指定した法人から認定を受けています。ほじょ犬には、「盲導犬」「聴導犬」「介助犬」がいるのですが、今回、注目するのは盲導犬。盲導犬は、目が全く見えない全盲の方に加え、全く見えないわけではないけれど、一人では生活しにくい方を助けるパートナーとして活躍しています。ただ、盲導犬の数は全国で950頭(2017年12月)、関係がなければ、その実態について知ることができません。

盲導犬とはどのような犬なのか、盲導犬の誕生からシニアになって引退するまでの道のりと共に、知られざる盲導犬の世界の一端をご紹介します。

■盲導犬に適した犬の血統とは

脈々と受け継がれる優秀な遺伝子。ブリーディングも訓練所の大事な仕事。

日本に盲導犬が導入されたのは、1970年頃の話です。警察官の塩屋賢一さんがシェパードのチャンピーという犬を盲導犬にすべく訓練しました。その後、イギリス原産のラブラドールに、盲導犬に適した犬がたくさんいることが分かり、現在、その遺伝子を持つ子孫が日本でも活躍しています。

オーストラリアがイギリスの植民地であったため、メルボルンから日本に来た盲導犬もいるそうです。盲導犬になるには、「適性のある犬の遺伝子」というのが非常に大切で、血統を引き継ぐ犬のブリーディングだけを訓練所では行っています。ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーであればいいというのではありません。

■選ばれし犬の才能と素質

純心無垢な子犬たち。人の愛をたっぷり受けてすくすく育つ。

誕生した犬のうち、盲導犬になれるのは3~4割です。取材した日本ライトハウス盲導犬訓練所では、年間60頭の子犬が産まれて、約20頭が盲導犬としてデビューするのです。

産まれた子犬は、1歳になるまでパピーウォーカーという子犬育成ボランティアに託されます。その後、1歳になるとパピーウォーカーのもとを離れ、盲導犬としての素質を開花できるかどうか5日間かけて判定されるのです。

ここが運命の分かれ道。評価の対象になるのは、大きな音を怖がらないか、吠えるのが好きじゃないか、いろんなところで落ち着いていられるか、名前を呼ばれたら反応できるかなどの項目に加え、犬が自分自身で「判断」する能力があるのかということが重要なポイントになります。

これは例えば、車が来ている時に進むべきか、踏みとどまるべきか、使用者の方の目の代わりになって判断する能力があるかどうか、ということを意味します。もちろん、最初からそういう能力が備わっているわけではなく、訓練することで、もともと持っている能力を生かせるかどうかが判定の基準になるのです。

■訓練を経て、それぞれの場所へ

血統は絶対的なもの、しかし、選抜されるのは3頭に1頭だけ

こうして選抜された犬は、専門の訓練士の手によって約1年間訓練されます。訓練は、ほとんどの訓練所が「ほめて育成する」方法で行っています。しかし、途中で適性がないと判断された場合は、盲導犬にはなれません。介助犬になったり、一般家庭に引き取られたり、犬の性質に合った場所で生きていくようキャリアチェンジします。

「飼い主がころころ変わっても大丈夫なのか」と思われるかもしれませんが、ラブラドール・レトリーバーは、ワンオーナードッグではありません。飼い主が変わっても、愛情をかけられて育つ限り次の場所で幸せになれるので、そういう意味でも盲導犬に適しています。

■眼を合わせてはいけない理由

子犬時代、パピーウォーカーといろんな場所に行って、社会や人に慣れる

ある総合病院の待合室で、私はとても悲しそうな空気を漂わせる盲導犬に会いました。使用者の女性は、どことなく浮かない顔つき。職員の人と話をされていて、どうやら何かうまくいっていないようでした。思わず盲導犬を見つめると、まるでおしゃべりをするように眼と眼を合わせてくるではありませんか。私は思わず心の中で、「淋しいの? 幸せじゃないの?このまま連れて帰りたいよ」と話しかけていました。

あの時、盲導犬は何を訴えようとしていたのか。訓練所の方に伺いました。それはたぶん、「遊んでくれるの?遊びたいよ」と言っていたのではないかということでした。

仕事中の盲導犬に話しかけたり、触ったりしてはいけないと知ってはいても、眼と眼を合わせてもいけないことはご存知ないかもしれません。視線を合わせて心を通じ合わせるというのは、強力なコミュニケーションの手段になります。視覚障害者の方は眼と眼で会話できないので、その分、犬に言葉をかけることで愛情を表現するのです。

だから健常者が仕事中の盲導犬と眼と眼で会話してしまうと、犬の気を大きく逸らせることになってしまうのです。もし、何か感じることがあれば、その時は使用者の方に「お手伝いできることはありますか」と尋ねましょう。

■仕事中以外は、普通の犬として幸せを謳歌

引退後はシニア犬ボランティアに引き取られ、普通の犬として幸せに生きる

盲導犬と初めて暮らす使用者は、約1ヶ月間、自分のパートナーになる犬と訓練所で合宿を行います。犬を手入れする方法、犬の病気など、犬と一緒に暮らす知識を身につけるそうです。

盲導犬は、仕事をさせられてかわいそう。そう思われる方もいらっしゃると思います。私もそうでした。しかし、盲導犬は盲導犬としての適性に優れてはいるものの、仕事中でなければ普通の犬と同じように甘えたり、遊んだりして過ごすそうです。

盲導犬の平均寿命は、普通の同じ犬種の犬と比べて1歳半長いと言われ、健康診断などのケアもこまめに受けています。日頃も、毎日のブラッシングや歯磨きはもちろん、夏場の暑い日には、使用者はアスファルトの温度を手のひらで確かめてから出かけるそうです。

もちろん、虐待など適正な使用がなされていない場合は、使用できなくなることもあります。普通の盲導犬は、10~12歳で引退して、シニア犬を預かるボランティアのもとで暮らすそうです。訓練所では、盲導犬が生涯幸せに暮らせるよう、一生を終えるまで状況を追跡、確認しています。

日本ライトハウス盲導犬訓練所では、「人も犬も幸せになれる社会」を目指して盲導犬訓練をしています。使用者の方と盲導犬、二人三脚の人生と犬生、暖かく見守りたいですね。

取材・文/わたなべあや
1964年、大阪生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。2015年からフリーランスライター。最新の医療情報からQOL(Quality of life)を高めるための予防医療情報まで幅広くお届けします。

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