取材・文/池田充枝
女流画家・上村松園(うえむらしょうえん 1875-1949)は、自らと同じ“女性”を描き続けた日本画家です。
京都市下京区四条通御幸町の葉茶屋「ちきり屋」の次女として生まれた松園は、明治20年に京都府画学校に入学し、四条派の鈴木松年に師事。明治23年の第3回内国博覧会に「四季美人図」を出品して一等褒状を受賞します。この絵を来日中の英国コンノート公が購入したことで、またたく間に話題となりました。
以後、鈴木松年、幸野棋嶺、竹内栖鳳らに師事し、一貫して女性の姿を描き続けました。「女性は美しければよい、という気持ちで描いたことは一度もない。一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである」と自らの画業を語っています。
昭和23年(1948)、女性として初めて文化勲章を受章。長男の上村松篁(しょうこう)、孫の上村淳之(あつし)ともに日本画家として名を成していきます。
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そんな上村松園の珠玉の作品群とともに、江戸時代から現代までの美人画の名画を鑑賞できる展覧会《上村松園 ―美人画の精華―》が、東京の山種美術館で開かれています(~2017年10月22日まで)
本展は、日本屈指の松園コレクションで知られる山種美術館が所蔵する松園作品18点を一挙公開するもので、美人画に焦点をあて、江戸時代から現代に至る、さまざまな画家たちが描いた女性像も併せて紹介します。
本展の見どころを、山種美術館の館長、山﨑妙子さんにうかがいました。
「上村松園は、当館創立者で初代館長の山﨑種二が親しく交流した画家の一人です。そのため、現在、山種美術館には《蛍》《新蛍》《砧》《牡丹雪》など、松園の代表作を含む18点が所蔵され、日本屈指の松園コレクションとして知られています。今回はその全18点を一挙公開するとともに、松園からの書簡などの資料も紹介します。
松園以外の作品では、浮世絵師たちによる美人画もご覧いただきます。世界で数枚しか現存しないとされる稀少な浮世絵、鈴木春信《梅の枝折り》などにみる華奢な娘の姿や、すらりとした八頭身に流行の着物をまとった鳥居清長の美女たち、喜多川歌麿の艶やかで魅惑的な女性たちは当館の浮世絵コレクションからの展示です。
さらに近年人気の高い月岡芳年の代表作《風俗三十二相》を、他所属先から特別に拝借して初公開します。「うるささう」「ねむさう」などタイトルもユニークな、芳年ならではのウィットに富んだ女性たちの豊かな表情をお楽しみください。」
「一方、近代絵画は、菱田春草や池田輝方による江戸風俗の女性たち、和田英作、鏑木清方、伊東深水らによる古今の和装や洋装の美人、小倉遊亀、片岡球子ら女性画家が描く凛とした女性たちなど、当館コレクションからバラエティに富んだ美人画をご紹介いたします。画家の言葉や、さまざまな画家の視点で描かれた舞妓や芸妓の比較、松園もこだわった、画中の女性たちの髪形やファッションなどもお楽しみいただける展覧会です」
ずらりと並ぶ表情豊かな女性たちのあでやかな姿は圧巻です。男女を問わず共感できる古今の美人画の名品を、会場でじっくりご堪能ください。
【上村松園 ―美人画の精華―】
■会期:2017年8月29日(火)~10月22日(日)会期中、一部展示替えあり
■会場:山種美術館
■住所:東京都渋谷区広尾3-12-36(恵比寿駅より徒歩約10分)
■電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
■ウェブサイト:http://www.yamatane-museum.jp/
■開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
■休館日:月曜日(ただし9月18日、10月9日は開館)、9月19日(火)、10月10日(火)
取材・文/池田充枝