取材・文/池田充枝
大英博物館やナショナル・ギャラリーなどと並ぶ、英国を代表する国立美術館のひとつテート(TATE)は、テート・ブリテン、テート・モダン、テート・リバプール、テート・セント・アイヴスの4つの施設からなり、約7万点のコレクションを有します。1897年の開館以来、その充実したコレクションのみならず、幅広いテーマを扱う展覧会や、国内外での先進的な活動によって常に注目を集めてきました。
そんなテート・コレクションの多様な魅力を伝えるべく企画されたのが「ヌード」展です。芸術家たちの200年にわたる裸体表現のストーリーを伝える企画展として2016年11月にシドニーで開催、多くの話題と反響を呼びました。同展はオークランド、ソウルへと巡回し、このたびいよいよ日本に上陸しました。
日本での会場は、横浜美術館。ロダンの日本初公開作品はじめ、テート・コレクションのヌードの傑作が集結した見ごたえある展覧会です(~2018年6月24日まで)。
本展の見どころを、読売新聞東京本社・文化事業部の池田匠汰さんにうかがいました。
「人間にとって最も身近といえる“裸体(ヌード)”というテーマに、西洋の芸術家たちは絶えず向き合い、挑み続けてきました。美の象徴として、愛の表現として、また内面を映し出す表象として、ヌードはいつの時代においても永遠のテーマとしてあり続け、ときに批判や論争の対象にもなりました。
本展は、世界屈指の西洋近代美術コレクションを誇る英国テートの所蔵作品により、19世紀後半のヴィクトリア朝の神話画や歴史画から現代の身体表現まで、西洋美術の200年にわたる裸体表現の歴史を紐ときます。
フレデリック・レイトンが神話を題材として描いた理想化された裸体から、ボナールらの室内の親密なヌード、男女の愛を永遠にとどめたロダンの大理石彫刻やシュルレアリスムの裸体表現、人間の真実に肉薄するフランシス・ベーコン、さらにはバークレー・L・ヘンドリックスやシンディ・シャーマンなど、現代における身体の解釈をとおして、ヌードをめぐる表現がいかに時代とともに変化し、また芸術表現としてどのような意味をもちうるのかをたどります。
テートは1897年の開館以来、世界屈指の近代美術コレクションと先進的な活動で常に美術家をリードしてきました。その珠玉のコレクションから、ヌードを切り口に、ターナーが描いた貴重なスケッチや、マティス、ピカソ、ホックニーなど美術館を代表する作品の数々が展示されます。
注目は、ロダンの代表作である大理石彫刻《接吻》です。ロダンが生前に手がけた3体の大理石像のうちの1体が、日本初公開となります。会場では高さ180センチ余りのスケールで制作された迫力の大理石像を360度ぐるっと鑑賞することができます」
西洋の芸術家たちの真摯な挑戦に圧倒される展覧会です。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより
会期:2018年3月24日(土)~6月24日(日)
会場:横浜美術館
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時から18時まで、5月11日(金)、6月8日(金)は20時30分まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:木曜日(ただし5月3日は開館)、5月7日(月)
展覧会公式サイト:https://artexhibition.jp/nude2018/
美術館サイト:http://yokohama.art.museum
取材・文/池田充枝