取材・文/片山虎之介

花見に持参する御馳走には、向き不向きがある。食べるときに調理、加工する手間がかからないものが理想的だ。火を使って温めたり、あるいは氷で冷やす必要があるような食べ物は、ちょっと難しい。

江戸時代、商家の裕福な旦那衆などは、料理人を伴って花見に出かけた。桜の下で炭火を起こして調理させ、温かい料理を味わいつつ、宴を楽しんだものらしい。

そこまでの散財は無理にしても、折角の楽しい行事なのだから、少々の贅沢はしてみたい。お気に入りの銘酒を抱え、酒の肴には、鮨屋の卵焼きなど求めて持参するのも一興だ。

昔は、「卵焼きを食べれば、その鮨屋の腕がわかる」などと言われたものだが、昨今は卵焼きを作る専門の業者がいて、それを仕入れて供する鮨屋も多くなった。

花見の日には、店で卵焼きを作る気合いの入った鮨屋の卵焼きを味わいたい。厳選した材料を使い、手間ひまかけて作る、腕の良い鮨屋の卵焼きは、ひと味、ふた味違う。

酒宴の席は、卵焼きの話で、ひとしきり盛り上がることだろう。

取材・文/片山虎之介
世界初の蕎麦専門のWebマガジン『蕎麦Web』(http://sobaweb.com/)編集長。蕎麦好きのカメラマンであり、ライター。伝統食文化研究家。著書に『真打ち登場! 霧下蕎麦』『正統の蕎麦屋』『不老長寿の ダッタン蕎麦』(小学館)、『ダッタン蕎麦百科』(柴田書店)、『蕎麦屋の常識・非常識』(朝日新聞出版)などがある。

※本記事は「まいにちサライ」2011年4月11日配信分を転載したものです。

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