取材・文/池田充枝

日本の浮世絵史上の二大巨頭、北斎と広重は同時代に活躍した絵師でした。

葛飾北斎(かつしか・ほくさい、1760-1849)は、狂歌絵本、読本、絵手本、錦絵、肉筆画など多彩な分野で活躍し、その画業は後の印象派の画家などに大きな影響を与えました。なかでも天保2年(1831)頃より西村永寿堂から発行された「冨嶽三十六景」は、当時の富士山信仰を背景に、斬新な構図や輸入品の化学顔料ベロ藍を用いた鮮やかな発色で人気を博しました。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》〔江戸時代 18世紀 MOA美術館蔵〕

 

一方、歌川広重(うたがわ・ひろしげ、1797-1858)は、はじめ歌川豊広の門人として役者絵、美人画を描いていましたが、風景画家として名声を高め、晩年まで多くの名所絵を制作しました。天保5年(1834)に版元である竹内孫八が刊行した「保永堂版 東海道五十三次」は自然と融合した庶民の暮らしや旅の情景が生き生きと描かれ、広重の出世作となりました。

歌川広重《東海道五十三次 日本橋》〔江戸時代 18世紀 MOA美術館蔵〕

この二大絵師の代表作が一堂に会する展覧会「北斎と広重 冨嶽三十六景と東海道五十三次」MOA美術館で開かれています(~2018年4月24日まで)。本展は、浮世絵風景版画の分野を確固たるものとした冨嶽三十六景全46枚と保永堂版東海道五十三次全55枚を全期間通じて公開します。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》〔江戸時代 18世紀 MOA美術館蔵〕

本展の見どころをMOA美術館の学芸員、河野泰典さんにうかがいました。

「世界的な名作であり、希少な北斎の『冨嶽三十六景 凱風快晴』にみられる、霊峰富士の裾野から中腹そして頂上へ時間的に変化していく、色摺りの繊細な表現。そして広重『保栄堂版三十六景 蒲原』の白銀の世界に生活する人々の叙情的な心像風景など、見どころ満載です」

歌川広重《東海道五十三次 庄野》〔江戸時代 18世紀 MOA美術館蔵〕

日本が誇る二大絵師による風景画の競演。この機会にぜひご堪能ください。

【開催要項】
《北斎と広重 冨嶽三十六景と東海道五十三次》
会期:2018年3月16日(金)~4月24日(火)
会場:MOA美術館 展示室1-3
住所:静岡県熱海市桃山町26-2
電話番号:0557・84・2511
開館時間:9時30分より16時30分まで(入館は16時まで)
http://www.moaart.or.jp

取材・文/池田充枝

 

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