葛飾北斎「冨嶽三十六景」より《神奈川沖浪裏》

葛飾北斎「冨嶽三十六景」より《神奈川沖浪裏》

江戸期を代表する絵師・葛飾北斎(1760-1849)の描いた「富士山」ばかりを集めた企画展が、長野市にある水野美術館で始まりました(〜9月19日まで)

北斎は、浮世絵師としておよそ70年にも及ぶ活動の中で、自ら「画狂人」と名乗り、表現においても肉筆美人画、役者絵、北斎漫画など変幻自在な画境を展開しました。その卓越した描写力は江戸時代から現在まで、日本を越えて世界中の人々を魅了し続けています。

本展は、そんな北斎の多彩な表現のなかでも“富士”のみに焦点を当てた珍しい展覧会です。70歳を超えた北斎がその名を不動にした「冨嶽三十六景」、そしてその後版本として出版された「富嶽百景」の二大連作、全148点に関連作品を加えた159点をずらりと展観します。

葛飾北斎「冨嶽三十六景」より《駿州江尻》

葛飾北斎「冨嶽三十六景」より《駿州江尻》

本展の見どころを水野美術館・学芸員の髙田紫帆さんにうかがいました。

「今回展観する『冨嶽三十六景』は、保存状態が非常に優れているため色彩が鮮やかなのが第一の見どころです。この作品で使われている青色は、通称“ベロ藍”。当時、西洋から輸入され一大流行したベルリアン・ブルーという人工顔料です。国内でこのベロ藍を使った代表作といわれるのが北斎の『冨嶽三十六景』です。北斎の“青”をご堪能下さい。

『富嶽百景』については、和綴じ本のため展覧会などでは全図を一度に見ることが困難でした。しかし本展では、所蔵家のご協力とご理解のもと、今回特別に図版一つ一つを額装にして全102点を一堂に会することができました。一つずつ違う百景の富士が並ぶ様子は壮観です。

また本展では、北斎の『冨嶽三十六景』について、現在のどの場所から眺めて描かれたものかを地図で示して解説します。北斎の足跡を辿って江戸時代の旅の気分を味わってください」

名にし負う「北斎の富士山」を一気に味わえる、またとない機会です。同時開催の「水野コレクション 麗しき風景画の世界」もお楽しみいただけます。ぜひ足をお運びください。

水野美術館のサイトはこちら

【北斎の富士 冨嶽三十六景と富嶽百景】
■会期/2016年8月6日(土)~9月19日(月・祝)
■会場/水野美術館
■住所/長野市若里6-2-20
■電話番号/026・229・6333
■料金/一般1000円 中・高校生700円 小学生400円 ※20名以上の団体は各100円引、身体障がい者手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳所持者と付添者1名は半額(要手帳提示)、着物での来館者は半額、小・中学生は毎週土曜日無料、小・中学生が授業の一環として利用する場合は無料
■開館時間/9時30分から17時30分まで(入館は17時まで)
■休館日/月曜日(ただし9月19日は開館)
■アクセス/JR長野駅東口より長電バス日赤・水野美術館行き乗車約10分「水野美術館」下車

取材・文/池田充枝
1989年「サライ」の創刊時より歴史資料の調査や展覧会情報を中心にフリーランスで「サライ」の取材・執筆に携る。

 

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