取材・文/池田充枝
17世紀初め、江戸幕府が政権を確立すると泰平の時代が訪れました。時を同じくして文化面でも新たな潮流が生まれます。それが寛永文化です。
寛永文化の中心は京都にあり、なかでも学問・諸芸に造詣の深かった後水尾院は、長く絶えていた儀礼や古典文芸の復興に尽力しました。幕府も公武間の交流の必要を認め、京都のサロンをおもな舞台として、公家、武家、町衆といった階級の垣根を越えて、人々は新しい時代にふさわしい美意識を共有しました。
そんな寛永時代に醸成された「雅」の美意識を堪能できる展覧会《寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽》が、東京・六本木のサントリー美術館で開かれています(~2018年4月8日まで)
本展では、近世初期の「雅」を担った宮廷文化と、それと軌を一にして生まれた新時代の美意識が、小堀遠州、野々村仁清、狩野探幽らの芸術に結実していく様子を展観します。
本展の見どころをサントリー美術館の担当学芸員、柴橋大典さんにうかがいました。
「寛永文化と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。そもそも「寛永」がいつ頃なのかもイメージしにくいかもしれません。
寛永文化は江戸時代の初め、寛永年間(1624-44)を中心に開花した文化です。関ヶ原の戦い、大坂の陣を経て、江戸幕府が政権を確立して平和な時代を迎えるとともに現れた、江戸時代最初の新しい文化傾向でした。
「黄金と侘び」の桃山文化、「絢爛と活気」の元禄文化の間にあたる寛永文化は、「きれい」が一つのキーワードになります。寛永文化の「きれい」は、華麗さというより、落ち着いた上品な色彩や明快な構図、均整のとれたシンプルかつシャープな造形、古典作品に基づいた豊かな文学性などからなる瀟洒な美しさです。そうした寛永文化の美意識によって作られた作品には、現代にも通じる洗練された感覚を見せるものも少なくありません。
本展覧会ではそうした寛永文化の世界を、その中心人物であった後水尾院と宮廷文化、そして後水尾院の周辺で活躍した小堀遠州、野々村仁清、狩野探幽の代表的な作品によって体感していただきます」
きれい極まる、上品で優美な作品の数々。上質な時間を過ごしに、ぜひ会場へ足をお運びください。
【開催要項】
《寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽》
会期:2018年2月14日(水)~4月8日(日)
会場:サントリー美術館
住所:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
電話番号:03・3479・8600
開館時間:10時から18時まで、金・土曜日は20時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:火曜日(ただし4月3日は18時まで開館)
http://suntory.jp/SMA/
取材・文/池田充枝