椿姫(ヴェルディ)、カルメン(ビゼー)、蝶々夫人(プッチーニ)……。オペラに馴染みがなくても誰もが題名を知っている名作オペラの数々。手がけたのは、いずれもクラシック音楽の大作曲家たちですが、そんなオペラ作曲家の筆頭として挙げられるのがモーツァルト。『フィガロの結婚』や『魔笛』など、日本でも人気の高い名作オペラが彼の作品です。5月30日から新国立劇場での上演が始まる『コジ・ファン・トゥッテ』も代表作のひとつ。今回の舞台では、序曲が終わり幕があがった瞬間に、あっと思うような風景が目の前に広がります。さて、その風景とは?

2011年公演より 撮影:三枝近志

世紀を超えて愛されるオペラを書いた大作曲家モーツァルト

短い生涯において600曲以上の作品を書いたといわれるヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。中でも、『コジ・ファン・トゥッテ』は、『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』と同じく詩人で台本作家であるロレンツォ・ダ・ポンテとのコンビによる人気作で、これに『魔笛』を加えてモーツァルトの4大オペラと呼ばれています。初演は1790年1月26日、ウィーンのブルク劇場において。それはモーツァルトの死の前年にあたります。

物語は若い恋人たちを中心に展開します。青年士官のグリエルモとフェルランドは、美しい姉妹フィオルディリージとドラベッラとそれぞれ恋愛中。自分の恋人の愛は絶対だと自慢する2人は、哲学者のドン・アルフォンソにそそのかされ、恋人たちの貞操を試す賭けに挑戦することに。純粋な青年たちは、老獪な哲学者に勝てるのか? その結末は? こうして繰り広げられる倒錯的な恋愛喜劇は、女声二重唱、男声二重唱、男女の二重唱に三重唱、四重唱と、次々に繰り出される重唱が聴きどころで、それは、モーツァルト・オペラの極致といえる美しさです。

売れっ子演出家ミキエレットが置き換えた舞台は“現代のキャンプ場”

聴きどころ満載の『コジ・ファン・トゥッテ』の舞台は、モーツァルトが生きた18世紀末のイタリア・ナポリとされています。ところが、公開が間近に迫った新国立劇場での『コジ・ファン・トゥッテ』では、なんと、現代のキャンプ場が登場。モーツァルトの名作が、より身近で楽しい人間ドラマとして蘇ってくるのです。

幕が上がると、そこは針葉樹の巨木が立ち並び、苔の薫りまで漂うような深い森。この森は木漏れ日から夕暮れ、闇へと刻々と情景が変化し、思わず感嘆の声が上がるほどの美しく深遠な世界です。そして、ストーリーが始まるや、キャンプグッズに本物のクルマやバイクなど、遊び心いっぱいの小道具やファッションが回転舞台に続々と登場。

2011年公演より 撮影:三枝近志 
2011年公演より 撮影:三枝近志 

オリジナルでは哲学者のドン・アルフォンソがキャンプ場のオーナー、青年士官とその恋人たちがキャンプ場を訪れる若者4人組に置き換えられて、物語が展開していきます。

演出を手掛けるのはダミアーノ・ミキエレット。ここ20年近く、コンスタントにヨーロッパのトップ歌劇場を飛び回って年間4〜5本の新作を手がけ、話題を巻き起こし続けている売れっ子です。

原作の設定を大胆に置き換えながらも、テキスト(歌詞)に寄り添って作品そのものの面白さを掘り下げようとする姿勢が高く評価され、観客の支持を受けています。

そんなミキエレットのプロダクションによる『コジ・ファン・トゥッテ』が新国立劇場で上演されるのは、2011年以来のこと。大きな話題を呼び新たな伝説を作った舞台が、13年振りに帰ってくるというわけです。

ダミアーノ・ミキエレット

旬な歌手陣が登場と驚きの結末に、最後まで舞台から目が離せない

『コジ・ファン・トゥッテ』は2組のカップルと、この恋愛ゲームの仕掛け人であるアルフォンソ、そして、恋愛の指南役として登場するデスピーナ(オリジナルでは小間使い、ミキエレット版では売店の店員役)の6人のキャストが皆、重要な役。全員が主役のアンサンブル・オペラです。

姉妹役として出演するのは、『トゥーランドット』リュー、『仮面舞踏会』オスカル、『カルメン』ミカエラなどの役でミラノ・スカラ座、英国ロイヤルオペラなどの著名劇場で大活躍するセレーナ・ガンベローニと、このミキエレット版の 2011年の初演でも同役を歌ったメゾソプラノのダニエラ・ピーニ。

対する若者二人には、プエルトリコから世界第一線へ躍り出たテノールの新スター、ホエル・プリエトと、評価も人気も爆発的に上昇中のバリトン大西宇宙。

ドン・アルフォンソ役にはナポリ出身の実力派のバスバリトン、フィリッポ・モラーチェ。デスピーナ役は、新国立劇場では様々な作品でその実力を発揮しているソプラノの九嶋香奈枝が出演します。

セレーナ・ガンベローニ(ソプラノ)
ダニエラ・ピーニ(ソプラノ)
ホエル・プリエト(テノール)
大西宇宙(バリトン)
フィリッポ・モラーチェ(バス・バリトン)
九嶋香奈枝(ソプラノ)

モーツァルトを得意とする旬の歌手陣の登場にも期待が高まるとともに、現代のキャンプ場という意外な設定でのドラマが楽しめるミキエレット版『コジ・ファン・トゥッテ』。実は、原作をひっくり返したような結末が待っていて……。これは最後まで目が離せません!

新国立劇場 2023/2024シーズンオペラ
モーツァルト『コジ・ファン・トゥッテ』
[全2幕/イタリア語上演 日本語及び英語字幕付]
公演日 2024年5月30日(木)〜6月4日(火)
会場  新国立劇場 オペラパレス/東京都渋谷区本町1-1-1
■新国立劇場オペラサイト
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/cosi/
■問い合わせ 電話:03・5352・9999(ボックスオフィス)

取材・文/堀けいこ

 

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