催し物

スペインの名匠アレックス・オリエが演出する、まだ誰も観たことのない“新しい『カルメン』の世界”

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2021/6/4

文／堀けいこ

７月３日から新国立劇場オペラパレスで上演されるのは名作オペラ『カルメン』。時代を超えて愛される作品だが、今回の公演は、指揮・大野和士オペラ芸術監督、演出・スペインの名匠アレックス・オリエという、最強のふたりがタッグを組んだ新制作。「新たな『カルメン』が生まれる」。そんな声とともに世界中から熱い視線が注がれている。

『カルメン』は世界中で最も数多く上演されているオペラのひとつ。新国立劇場オペラでも、その人気は常にトップクラスにある。

スペインのセビリアを舞台に、魔性の女カルメンと軍人ホセの破滅的な愛を描いた物語『カルメン』。原作はフランスの作家プロスペル・メリメの小説で、オペラの初演は1875年３月３日のパリのオペラ＝コミック座。カルメンの登場で歌われる「ハバネラ」、彼女がホセを誘惑する「セギディーリャ」、フラメンコを踊りながら歌われる「ジプシーの歌」、華やかな「闘牛士の歌」など、ビゼーの音楽は、フランス・ロマン派の魅惑的な響きと、スペインの民族色を取り入れた旋律が融合した情熱的なもので、いつの時代も観客を熱狂させてきた。

「先入観を捨てて私たちの『カルメン』を観てください」演出家アレックス・オリエ

数々の有名曲によってドラマチックに展開していく『カルメン』は、舞台を観たことのない人たちの中にも、いにしえのスペインの巷の風景や、カルメンが長いスカートの裾を翻がえして踊り歌う姿と共に、固定されたイメージとして定着している。しかし、今回の新制作で演出を手掛けるアレックス・オリエは言う。「これまで観てきた『カルメン』は忘れ、先入観を捨てて私たちの『カルメン』を観てください」と。

スペインはバルセロナ出身の演出家アレックス・オリエは、スペインの前衛的パフォーマンス集団ラ・フーラ・デルス・バウスの芸術監督のひとりで、大規模な野外イベントや演劇など広い分野での活動で高い評価を得てきている。近年はとくにオペラの演出で活躍し、ザルツブルク音楽祭、パリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座など世界の歌劇場で話題作を発表。日本においては、新制作されて国内各地で上演された一昨年の『トゥーランドット』で、その実力のほどを示した。

大胆な発想と強い求心力によるダイナミックな演出で注目を集めてきたオリエの新解釈によると、カルメンは現代的で知的、勇気と反骨心を持って自由に生きる女性。一方のホセは独占欲が強く、嫉妬深く、拒絶を受け入れられない男。こうした性格の二人が出会い、恋に落ちることは、どの時代、どこの国でも起こり得ることだとオリエは言う。

そうした構想の下、現代の我々に通じる愛の悲劇のドラマとして再構築された『カルメン』が、今、日本の舞台で誕生しようとしている。

カルメン役には、フランス・オペラを得意とし、演技力にも定評のあるフランスのメゾソプラノ、ステファニー・ドゥストラック。ホセ役には、注目の新進テノール、ミグラン・アガザニアン。砂川涼子や妻屋秀和など、日本を代表する実力者歌手たちの登場にも注目が集まる。

指揮は大野和士オペラ芸術監督が自らあたり、オリエとタッグを組んで、劇場を情熱の渦に巻き込む。日本から世界に向けて発信される新しい運命のドラマ『カルメン』が、もうすぐ生まれる。その瞬間は見逃せない。

新国立劇場　2020／2021シーズンオペラ開幕公演
『カルメン』
作曲　ジョルジュ・ビゼー
［全３幕／フランス語上演　日本語・英語字幕付］
公演日　７月３日（土）～19日（月）
会場　　新国立劇場オペラパレス／東京都渋谷区本町1-1-1
■新国立劇場オペラサイトhttps://www.nntt.jac.go.jp/opera/
■問い合わせ　電話：03・5352・9999（ボックスオフィス）

新国立劇場では、新型コロナウイルス感染拡大予防への取り組みが実施されます。