文/石川真禧照(自動車生活探険家)
自然豊かな田園で過ごす。英国伝統のカントリー・ジェントルマン文化が鍛えたランドローバー社の最新SUVは、都市にも田舎にも似合う4WD車である。
1948年、英国で一台の車が発表された。ぬかるみや荒野を走破できる4輪駆動車。米国のジープの対抗馬として開発された車は「ランドローバー」と名付けられ、農地や森林作業で活躍した。
「丈夫で、乗り心地もよく、高速道路も快適に走行できる」と評判になったランドローバーを欲しがる声は、英国だけでなく欧州の国々からも聞かれるようになった。
そこでランドローバー社は、1970年に新しい高級4輪駆動車を発表。「レンジローバー」と名付けた。レンジローバーは“荒野のロールスロイス”ともいわれ、人気を博した。ただし車体は大きく、燃費もけっしてよくなかった。
世間はより小さなレンジローバーを欲した。そこで2010年に発表されたのが、「レンジローバー イヴォーク」である。日本でも納車待ちの人気車になり、世界で累計80万台以上を販売。210以上の国際的な賞を獲得した。
車の真下をカメラが映す
2018年秋にモデルチェンジを遂げ、昨年、2代目の新型イヴォークが日本に上陸した。外観の印象は先代と変わらないが、エンジンや装備には最先端技術を導入。中には世界初の新技術もある。
試乗時に重宝したのは、「クリアサイトグラウンドビュー」という車体前方の真下の路面状況を映し出すカメラ機能だ。たとえば急な勾配を車で登るとき、運転者にはボンネット上部しか見えない。そこでこのカメラの画面に切り替えると、路面が映され、前輪や縁石の位置なども確認できた。道なき道を走るときのための装備ではあるが、狭い駐車場の切り返しなど、都会でも便利な機能である。
ゲリラ豪雨、台風時に安心なランドローバーの「渡河性能」
ここ数年、全国で豪雨などによる水害、水没被害を目にすることが多い。そうしたときに心強いのがイヴォークの「渡河性能」だ。
ランドローバーの英国本社には、広大なジャングルを模したテストコースがあり、沼の中を走るコースを走ると、ドアの窓のすぐ下まで水が迫る。そうしたテストコースで厳しい検証を重ねて生まれた新型イヴォークは、水深60cmまでの水中を走行することができる。
自動ブレーキや車線逸脱防止装置、駐車時に便利な360度の俯瞰カメラなどの安全・安心機能のほか、AI(人工知能)を利用した高級車らしい先進装備もある。キーとスマートフォンを介して運転者を認識し、運転者好みの室温や、オーディオ、座席のマッサージ設定など好みのパターンを自動的に再現してくれるのである。
イヴォークのエンジンは、3タイプ4種類から選べる。「ガソリン」(2種類)、「ディーゼル」、そして減速時に発電した電力を発進時に活用する「マイルドハイブリッド」(ガソリン+モーター)だ。今回は2Lのディーゼルターボに試乗。燃費が良く、高速走行も静かに力強く走り、長距離ドライブには絶妙の一台だった。
【ランドローバー/レンジローバー イヴォーク SE D180】
全長× 全幅× 全高:4380×1905×1650mm
ホイールベース:2680mm
車両重量:1950kg
直列4気筒DOHCディーゼルターボ/1999cc
最高出力:180PS/4000rpm
最大トルク:43.9㎏-m/1750~2500rpm
駆動方式:4輪駆動
燃料消費率:12.8km/L(WLTCモード)
使用燃料:軽油/65L
ミッション形式:電子制御9速自動
サスペンション:前:マクファーソン式ハイドロブッシュ 後:インテグラルリンク式
ブレーキ形式:前・後:ベンチレーテッドディスク
乗車定員:5名
車両価格:679万円(税込み)
問い合わせ:ランドローバーコール0120・18・5568
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2020年4月号より転載しました。