取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ただの乗り物なのに、不思議と人の心を魅了する自動車とオートバイ。ここでは自動車やオートバイを溺愛することでオーナーさんの歩んだ、彩りある軌跡をご紹介します。
今回、お話をうかがったのは、千葉県で商業施設の空間デザイン会社を営む遠藤彰さん(62歳)です。 31歳の時にクルマ仲間だった奥様と結婚。一昨年前に勤めていた会社を定年退職し、身につけたノウハウと人脈を活用して会社を立ち上げ、今日に至ります。
鉄道写真を撮ることに夢中だった少年時代
千葉県千葉市で産声をあげた彰さん。幼い頃は鉄道に興味を持ち、また写真が趣味のお兄さんの影響もあって、カメラを抱えて機関車や電車を追いかける少年時代を送っていました。
クルマに興味を持つようになったのは、大学に入学してからのこと。18歳で運転免許証を取得し、親御さんにマツダの3代目『ファミリアプレスト』を購入してもらいます。
「当時はまだクルマに興味がなかったので、とくに感想を持たなかったのですが、今になって思えば軽くて小回りのきくクルマでしたね。その後、大学の先輩に誘われてPD(プレイドライブ)ラリークイズに挑戦したのが、クルマに興味を持つきっかけになりました」
PDラリークイズとは当時、芸文社より発行されていたドライブ情報雑誌『プレイドライブ』に連載される読者参加型の企画です。実際のラリー競技で使用される“コマ地図”に則した地図が掲載され、指定された地点を辿った移動距離を求めて編集部に送るといった内容でした(現在、プレイドライブは合同会社サンクより発行されており、PDラリークイズの連載は終了しています)。
「ファミリアはバイアスタイヤだったので、指定された林道の走行は恐かったですね。車載の走行距離計で計った距離を編集部に送ったら、見事に正解だったようでゼロステッカーが送られてきました。以降、プレイドライブを購読し、近県でPDラリークイズが実施された際は積極的に参加しました」
雑誌の企画からクルマとラリーに興味を持った彰さん。ちょうどその頃、実家からほど近いところに競技用車両への改造も手がける自動車修理工場がオープン。さっそく赴きます。
「この店に訪れたのが運の尽きでした。店主に「ファミリアでもラリーに出られる」と聞き、すっかりその気になってしまいました」
ラリー競技に出場できるようファミリアに安全装備を施すと、大学や自動車修理工場で知り合った仲間と一緒に、大学ラリーなどのアマチュアラリー競技に出場します。
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