選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
昨年2018年は、フランス近代を代表する作曲家クロード・ドビュッシーの没後100年であった。その決定打とも言えるのが、ヴァイオリンのイザベル・ファウスト、チェロのジャン=ギアン・ケラス、ハープのグザヴィエ・ド・メストレ、ピアノのアレクサンドル・メルニコフら、錚々たる豪華な演奏家たちがそろったアルバム『最後のソナタ集』である。
第1次世界大戦の不安、そして自らの病気に苦しめられながら、作曲家が文字通り魂を込めて完成させた最晩年の傑作「ヴァイオリン・ソナタ」「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」「チェロ・ソナタ」が1枚に収められ、その間をピアノ小品がつなぐという構成。
20世紀初頭に使われていたアンティークの楽器を用いた響きは、陰影に満ちた非日常的な美の世界へと聴き手をいざなう。死の直前になっても「音楽を学びなおしている」というドビュッシーの言葉を多く引用した解説も読みごたえがある。(>>試聴できます)
【今日の一枚】
ドビュッシー:最後のソナタ集
ファウスト、ケラス、メルニコフ他
発売/キングインターナショナル
電話:03・3945・2333
3000円
文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2019年2月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。