文/中井シノブ
かつて観光客は、京都駅に着くなりバスや地下鉄に乗り、東山や嵐山など観光地、または河原町界隈の繁華街へと移動した。京都駅近辺には、一息つける場所や気軽にご飯を食べられる店が少なかったからだ。
ところが、ここ数年の外国人観光客の増加で、そんな事情は一変した。京都駅近辺にホテルが多いこともあり、外国人観光客が、京都駅前を散策するようになったのだ。
となると、カフェや飲食店も次から次へと開店。いまや京都駅前は、新たな注目スポットになっている。
たとえば駅前にあって京都の顔ともいえる「京都タワー」だが、今年の春に、地下1階から2階までが「京都タワーサンド」として生まれ変わった。
1階は京都らしいお土産が集まる「マーケット」、2階は和菓子作りや陶芸などを体験できる「ワークショップ」、そして地下1階には、京都の美味が集まる「フードホール」が誕生した。
とくに使い勝手がいいのが、地階1階のフードコートだ。11時から23時までの営業で、観光客は昼食や昼飲みに立ち寄る。また、近隣に勤める人たちも、昼ご飯はもちろん仕事終わりの飲み会などに利用する。
なにより、このフードコートが秀逸なのは、京都の人気店が集まっていること。焼肉の「弘」、中華料理の「魏飯吉堂」、老舗の焼鳥店「鳥せゐ」といった誰もが知る有名店のほか、回転寿司やデザート店もある。
食べたい料理やお酒を好きなだけ買って、フロア中央のテーブルで味わえる。数人集まれば、小籠包とタコス、焼鳥を前に小宴なんていうことも可能なのだ。
十数件ある店のなかで、特に私がおすすめしたいのは、ぎょうざ処「亮昌」と、フライドチキンとハイボールの「リンク」である。
「亮昌」(すけまさ)は、京都産のもち豚や九条ネギをつかった和餃子の店。豚肉の旨味やねぎの甘味など素材の美味しさが染み出すジューシーさがたまらない。
一方、「リンク」のフライドチキンはハーブが利いた自家製のタレで漬け込んだ唯一無二の味。店名にもなっているハイボールとの相性も抜群で、一度食べたら、またすぐにでも食べたくなる。
京都駅前界隈には、この「京都タワーサンド」以外にも、行列のできるビフカツ店やクラフトビール専門店などが続々と開業し、いまや河原町以上?といえるほどの勢いだ。観光客だけでなく、地元の京都人にとっても、足を向けたい場所になっている。
【京都タワーサンド】
京都市下京区烏丸通七条下る東塩小路町721-1
営業時間:9時~21時(1階、2階 )、11時~23時(地下1階)
https://www.kyoto-tower-sando.jp/
文/中井シノブ
京都在住編集者、ライター。京都をこよなく愛し、食べ歩くこと年間350日。『京都女子酒場』『京の一生もん』など京都関連の著書がある。