文・写真/中井シノブ
今、「京都食事情」で面白いのが、魚系のサンドイッチやドッグといったパンメニューが増えていることでしょうか。
私が最初に「これは!」とうなったのは、『祇園ろはん』の「鯖サンド」でした。酢締めにした鯖とすぐきなど酸味のあるお漬物をトーストでサンドしたもので、「トーストにしめ鯖って大丈夫?」と尻込みしていた私も、食べてビックリ。鯖のほどよい脂と香ばしいトーストがよくなじみ、不思議に美味しいのです。
ピクルスがわりのお漬物、アクセントになる大葉や自家製マヨネーズの加減がまたよくて……。しばらくは、「ああ、あの鯖サンド美味しかったなあ~」と思い出し、「やみつきになる」とはこういうことか、と改めて実感したものです。
その後も、昼呑みしようと立ち寄った『うえとサロン&バー』で、「鮎ドッグ」なるものに遭遇。鮎のリエットをドッグ系のパンに挟んだこの一品も、鮎の苦みがウイスキーやワインに合ってお酒がすすむ。
ほかにも、鱧フライを薄切りの食パンではさんだ「鱧サンド」や「焼き鯖のサンドイッチ」など、次々と目新しい料理に出会いました。
確かに、鱧フライはフィッシュフライだし、イスタンブールでは焼きサバサンドはポピュラーだと聞いたことも。けれど、日本食のイメージがある鯖や鱧、鮎といった魚を京都でパンメニューにするには、なかなか勇気もいるはずです。
うるさがたのお叱り(?)も覚悟のうえで、マヨネーズやソースにひと工夫くわえて和洋折衷の味わいにし、魚とパンをうまく寄り添わせる。そんな料理人の遊び心や美味しいモノへの探求心には、ほんとうに頭が下がります。
伝統を大切にしながらも、新しいものに挑戦する、京都人の気質と姿勢がここにも表れていると思うのは、私だけでしょうか。
文・写真/中井シノブ