文・写真/中井シノブ
京都の夏は祇園祭から、と京都人なら誰もが思うもの。コンチキチンとお囃子が町に流れ、商店街やお茶屋街など、そここにお祭りの提灯が灯ると、町衆の心にも火がつくのです。
7月1日の「吉符入(きっぷいり)」を皮切りに、7月末まで執り行われる八坂神社の祇園祭。その見せ場といわれるのが「山鉾巡行」ですが、2014年、この巡行が大きく変わります。昭和41年に17日と24日の巡行を合同化して以来、毎年17日に行われていた巡行を、49年ぶりに前祭と後祭の2回に分けて行なうのです。
前祭は、これまで通り10日に鉾建てが始まり、17日午前9時から長刀鉾を先頭に、23基の山鉾が巡行。そして、17日に後祭の鉾建てが始まり、24日に150年ぶりに復興を果たした大船鉾をはじめ、11基の山鉾が巡行します。
後祭でも21日~23日にお囃子の演奏など宵山行事が行われますが、露天商も出店しません。静かな町にお囃子だけが聞こえる、往時の祭りを堪能できそうです。
■150年の時を経て「大船鉾」が復興
この後祭での最大の話題は、しんがりを務める「大船鉾」の復興です。この「大船鉾」は元冶元(1864)年の蛤御門の変で焼失してしまい、以後、長らくお目にかかることができませんでしたが、御神体や懸装品(けそうひん)を会所で飾る神事「居祭」を続けてきた四条町町衆の復興への想いが叶い、今年150年ぶりに後祭の巡行に参加することが決まりました。
ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。町内の若手が「このままでは町内の祭が消える」と、囃子を復興させたいと声をあげたところから始まったのです。その翌年から囃子方を募集すると、町内外から人が集まり、次の年には囃子のお披露目を実現。その活動が大船鉾を復興する動きに広がっていきました。
再建にあたっては、材料費だけで手間賃はいらないと申し出た職人もいたそうです。ほかにも、京都青年会議所や京都ライオンズクラブなど京都の団体をはじめ、全国から寄付がなされ復興にこぎつけることができました。
49年ぶりに行なわれる後祭、そして150年ぶりに復興される「大船鉾」。その雄姿が披露される様子を京都人は心待ちにしています。
※京都祇園祭の公式ウェブサイト
http://www.gionmatsuri.jp/
文・写真/中井シノブ