不朽の名盤として音楽ファンに愛され続けるアルバムがある。1954年にニューヨークのスタジオで録音された「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」も、その1枚。ジャズ・ヴォーカリスト、ヘレン・メリルの初のリーダー作で、ジャズ・ファンばかりでなく、広い層に聴かれてきた。
名曲揃いのこのアルバムだが、中でも人気が高いのがコール・ポーター作曲の「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」。クリフォード・ブラウンのトランペットのイントロに続く歌い出しから、メリルの陰影に満ちたユニークなハスキー・ヴォイスにノックアウトされた人は多いだろう。
「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」の名唱を皮切りに、“ニューヨークのため息”と称されて魅力的なヴォーカルを聴かせ続けてきたヘレン・メリルが、約70年間にわたって歩んできたジャズ界から引退することを宣言。4月19日、20日、22日の三日間にわたって、「ヘレン・メリル フェアウェルさよならコンサート」がブルーノート東京のステージで行なわれる。
「ハスキーな歌声、清潔感のあるセクシーさ……、日本でのジャズ・ヴォーカルのイメージは、まさにヘレン・メリルさんの声、存在そのものではないでしょうか」というブルーノート東京広報の原澤美穂さんの言葉通り、ヘレン・メリルは日本での人気はとても高い。その背景には、数年間を日本で暮らしたことや、彼女自身が大の日本贔屓であることもある。
幾度となく日本を訪れ、熱烈なファンを前に度々ライブを行ってきたヘレンにとって、ブルーノート東京は馴染み深いステージ。そこでの最後のライブを目前に、彼女から、日本のファンへのメッセージが届いている。
「長年の友人であり、ファンの皆様へ
ブルーノート東京というステキな場所で行われる、私のさよなら公演で、また皆様に会えることを楽しみにしています。
私がはじめて東京を訪れたのは1960年代でした。当時若く、素朴な少女だった私は東京という街に行く事を恐れていました。しかしそこには、高層ビルも無く、たくさんの美しい、温かく友好的な人たちが待っていてくれました。
私はその全てに心を惹かれました。その気持ちは、今も、少しも変わることがありません。日本の皆様に、たくさんの愛と、感謝を。 ヘレン」
ブルーノート東京での「ヘレン・メリル フェアウェル さよならコンサート」での共演は、ヘレンのお気に入りでもある、テッド・ローゼンタール(ピアノ)、ショーン・スミス(ベース)、テリー・クラーク(ドラムス)。いずれも伴奏の達人で、2年前のブルーノート東京でのヘレン・メリルのステージでも共演をした3人。息の合った名手たちをバックに、再び、素晴らしいプレイを繰り広げてくれるにちがいない。
永遠の歌姫、ヘレン・メリルの姿を、そして、魅惑のハスキーボイスを、心の奥深くまでしっかりと刻みたい。
【ヘレン・メリル フェアウェル さよならコンサート】
■公演日時/2017年4月19日(水)、20日(木)、22日(土)
■会場/ブルーノート東京
東京都港区南青山6-3-16 ライカビル
■時間、料金などの詳細は下記ページを参照のこと
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/helen-merrill/
■予約・お問合せ/電話:03-5485-0088
文/堀けいこ