三日坊主という言葉が示すように、新しい習慣を身に着けるのに苦労している人は多いのではないでしょうか。自分は意志が弱いと落ち込んだり、続けられる人は特別だと思ったり。

じつはそれ、思い込みです。私たちの脳は「現状維持を好む」性質があり、新しい行動を始めるのが億劫だったり、続かなくなるのは脳の初期設定。そう教えてくれるのは70冊以上の著書を持つ言語学者の堀田秀吾先生。習慣は「原理とコツさえつかめれば、驚くほどスムーズに」身に着けることができるのだそうです。

堀田先生の最新著書『科学的に証明された すごい習慣大百科』(SBクリエイティブ)には、ハーバード、スタンフォード、オックスフォード……などの研究機関において証明された112個のテクニックが紹介されています。

今回はその本の中から、ダイエットを続けるために使える習慣をご紹介します。意外と簡単なことで、ダイエットを成功に導けるかもしれませんよ。

文/堀田秀吾

おでこをトントンする

額を指で30秒タッピングすると暴食を抑えられる

額をタッピングしたら食欲が半分以下まで減退した!

暴飲暴食を防ぐテクニックとして参考にするといいのが、「おでこをトントントンとタッピングするだけで湧いてきた食欲を解消できる」という研究です。

ニューヨーク市聖路加病院ウェイルらが行った実験で、肥満傾向の被験者の好きな食べものへの欲求を減らす方法として、以下の4つのアクションを比較して実験しました。

(1) 指で自分の額(おでこ)を30秒タッピングする×4回
(2) 指で耳を30秒タッピングする×4回
(3) つま先で床を30秒トントンと叩く×4回
(4) 空白の壁を30秒見つめる×4回

その結果、どのアクションも回数を重ねるごとに一定の食欲抑制効果があることが判明しました。さらに、(1) の額をタッピングするケースがもっとも高い効果があり、食欲が半分から1/3程度まで減退することもわかったそうです。

タッピングは不安解消にも効果あり

こういったタッピングは、おでこ以外にも、眉毛、目尻、目の下、顎、鎖骨などに行う「EFT(感情解放法)」と呼ばれるストレス解消法として知られ、その効果についてさまざまな議論がされています。ベングリオン大学のクロンドが行った、EFTに関する過去の研究を総合的に検討した「メタ分析」(複数の研究結果を統合し分析すること)によると、EFTは不安解消に効果があると結論づけています。

空腹を我慢するのはメンタルによくない

ただし、ダイエットをしたいがために空腹を我慢することはいいこととは言えません。そもそも空腹になると、心の安定と深く関係する幸せホルモンのセロトニンが減少します。イライラするのはこのためで、セロトニンが不足すると、うつ病や不眠症などの精神疾患に陥りやすいと言われているほどです。

血糖値の低下もイライラが止まらなくなる原因です。無理をして「食べない」という選択は控え、あくまで「食べすぎ注意」の際に行う緊急時のアクションとしてとり入れましょう。

食べすぎに注意したいときは、おでこをトントントンと30秒タッピングする。ただし空腹を我慢するためには行わない

映画館で映画を観る

映画鑑賞は軽い有酸素運動に匹敵する

映画鑑賞が脂肪燃焼に役立つ

映画鑑賞は、私たちにとって大きな娯楽の1つですが、「軽い有酸素運動に相当する」という研究が存在します。

ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのデヴリンらが主導した(学術誌に公表されたものではなく、企業がスポンサーになって行った学術的な)実験では、2019年に公開された映画『アラジン』を鑑賞する51人の参加者に生体認証センサーを装着し、2時間の上映中に参加者の心身に何が起こるかを観察しました。

すると、映画鑑賞者の心拍数が顕著に上昇することが判明し、45分間は健康な心拍ゾーン(40~80パーセント)にあったことがわかりました。この心拍数の上昇は、早歩きなどの有酸素運動に匹敵し、脂肪燃焼に役立つとのこと。

映画鑑賞はストレス回復に有効

また、精神面にもポジティブな影響を与えることがわかっています。マンハイム大学のリーガーとミシガン州立大学のベンテの研究によると、エンターテインメント性の高い映画は心理的なリラクゼーションとストレスの回復に有効であることが示されました。

上述のデヴリンは、「映画館に行くなどの文化的体験は、脳が長時間にわたって集中してとり組む機会を与える。集中力と注意力を維持する能力は、精神的な回復力を構築するうえで重要な役割を果たす」と説明しています。

映画鑑賞は脳を活性化させる

同様に、山梨県立大学の前澤らの研究も、映画鑑賞は脳の活性化に効果があると報告しています。

この研究では、39名の高齢者を対象に、1988年公開の『青い山脈』(吉永小百合主演)を鑑賞してもらったうえで脳波データの分析、唾液によるストレス分析を行いました。

その結果、被験者の健康度や積極性が高くなる傾向があるとし、鑑賞後の「状態不安」も低下したことから、映画を観ると元気になることが判明しました。

懐かしさを覚えたことで、こうしたプラスの働きを見せたこともありますが、思い入れのある映画を観ることは、心身にリラックス効果をもたらすと言えるのです。

家で映画を観ると退屈な感情が増大する

いまは動画配信サービスで、新旧の名作を簡単に見直すことができますが、レーゲンズバーグ大学のフロバーとフライブルグ大学のトーマシュケの研究によると、家で映画を観るのは退屈な感情を増大させるそうです。どうせ観るなら、映画館に行くほうがいいようです。

ストレスを回復したいならエンタメ系、脳を活性化させたいなら思い入れのある映画がおすすめ

*  *  *

『科学的に証明された すごい習慣大百科』
著者/堀田秀吾
SBクリエイティブ 1760円(税込)

堀田秀吾
言語学者(法言語学、心理言語学)。明治大学教授。1999年、シカゴ大学言語学部博士課程修了(Ph.D. in Linguistics、言語学博士)。2000年、立命館大学法学部助教授。2005年、ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了、2008年同博士課程単位取得退学。2008年、明治大学法学部准教授。2010年、明治大学法学部教授。
司法分野におけるコミュニケーションに関して、社会言語学、心理言語学、脳科学などのさまざまな学術分野の知見を融合した多角的な研究を国内外で展開している。また、研究以外の活動も積極的に行っており、企業の顧問や芸能事務所の監修、ワイドショーのレギュラー・コメンテーターなども務める。著書に『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』(クロスメディア・パブリッシング/共著)、『科学的に元気になる方法集めました』(文響社)、『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)、『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)など多数。

 

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