一橋治済(演・生田斗真)に瓜二つの男、その正体とは。(C)NHK

ライターI(以下I):『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』)第47回です。前週のラストで登場した「生田斗真激似」の男性の正体が明かされました。なんと、阿波徳島藩の能役者・斎藤十郎兵衛だというのです。こんな衝撃的な展開は予想すらしませんでした。

編集者A(以下A):前週の当欄では、「生田斗真激似の男」の登場に「爆弾が投下された」という表現を用いましたが、想像を遥かに超えた「巨大爆弾的」展開になりました。斎藤十郎兵衛という人物は、「東洲斎写楽の正体」とされる人物で、定説視する研究者が多いことで知られているのですが、『べらぼう』では「写楽=複数の絵師による工房説」を採用したために、第46回まで未登場でした。当欄も「東洲斎写楽=阿波徳島藩の能役者・斎藤十郎兵衛説は完全にスルーされるのか」(https://serai.jp/hobby/1248542)」という記事を発したばかりでした。スルーされるばかりか、「こんな展開あり?」という登場のしかたになりました。

I:斎藤十郎兵衛がこともあろうに一橋治済(演・生田斗真)と瓜二つの人物として登場し、松平定信(演・井上祐貴)、長谷川平蔵(演・中村隼人)、蔦重(演・横浜流星)らの企みのなかで、治済の替玉となるというのを承諾するという筋書きでした。徳島藩主蜂須賀治昭まで根回し済みという設定でした。

A:「そんなこと絶対にありえない!」と震えている方もいるかと思いますが、当欄では第44回に蔦重が安徳寺の襖を開けた瞬間から、物語は「夢噺パート」に突入したと勝手に解釈していますし、「大河ドラマは壮大なるエンターテインメント」と常から主張していますので、「おっと、こういう展開できましたか」と、驚きはしましたが、割と冷静に受け止めています。

I:とはいえ、一橋治済と瓜二つの斎藤十郎兵衛と治済を入れ替えるというあまり現実的ではない計画でした。しかも将軍家斉(演・城桧吏)、御三卿のひとつ清水家の当主清水重好(演・落合モトキ)まで動員する念のいれよう。こんなことありなんですか?

A:かなりの変化球、いや、魔球的展開といってもいいかもしれません。夢なのか現(うつつ)なのか、という問題もさることながら、根本的な問題として、斎藤十郎兵衛が、美術史学的には東洲斎写楽の正体だといわれていることを把握していないと、「この人は誰? いったい何者なの?」という場面です。実際にそう感じた人も多かったのではないでしょうか。

I:確かに、そうですね。そして、これだけ激似の人物がいるのかという問題があります。近代以前は、双子は忌避されて、間引かれるか、里子に出されていたそうですが、実は治済と十郎兵衛は、双子の兄弟という設定だったら面白いなと思いました。

A:確かに「双子の戦国武将」とか「双子の絵師」なんていないですよね。歴史上で双子といえば、『日本書紀』にヤマトタケルと大碓命(おおうすのみこと)は双子だと記述されていること、徳川家康次男の結城秀康には永見貞愛という双子の兄弟がいるという伝承があるくらいしか知りません。それだけ、「双子」は忌避された歴史があったという証です。もし治済の双子という設定だったとすれば、生まれてすぐに徳島藩蜂須賀家の関係者のもとに里子に出されて、能役者になったという設定になるのでしょうか。それならばありなのかもしれないですね。

I:ということでちょっと調べてみたのですが、十郎兵衛にはお墓がありまして、現在の埼玉県にある法光寺の過去帳によると斎藤十郎兵衛は文政3年(1820)に58歳で亡くなったと記されているそうです。これだと、治済とは10歳くらい離れていますから、現実的には双子というわけにはいかないようです。ちょっと残念!

A:とはいえ、松平定信のもとには徳島藩出身の儒者・柴野栗山(演・嶋田久作)がいますから、十郎兵衛とは旧知という設定でしたね。ちなみに後年、将軍家斉の二十二男が徳島藩に養子に入り、蜂須賀斉裕になります。将軍の息子が外様大名に養子に入るのはレアケースですから、存外、将軍家と徳島藩は密なつながりがあったのかもしれません。そのきっかけが『べらぼう』劇中で描かれた「替玉事件」という設定であれば、ストーリーはつながるわけです(笑)。

I:一見、支離滅裂のようで、実は緻密に計算されているのかもしれませんね。

夢なのか現(うつつ)なのか……。次ページに続きます

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