
職場などでの人間関係をスムーズにするツールのひとつでもあるアンガーマネジメント。怒りの感情をコントールすることで、人間関係が良くなるだけでなく、仕事の効率もあがることが注目されています。でも、そんな簡単に怒りをコントロールできたら、苦労はしないと思っていませんか?
アンガーマネジメントを日本に広めた第一人者・安藤俊介さんによると、アンガーマネジメントとは怒らない方法でも、イライラしなくなる方法でもないといいます。自分、とくに怒りを理解し、心を軽くすることなのだそうです。
そこで、今回は安藤俊介さんの最新著書『そんなに怒らニャくてもいいんだよ ネコと学ぶ心が軽くなる方法』(宝島社)から、相手に上手に気持ちを伝えられる方法をご紹介します。言葉は使い方次第で、良くも悪くも捉えられるものです。
文/安藤俊介
「私は~思う」を口癖に
自分を主語にすれば、相手を責めなくなる
怒る時は、どうしても相手を責めがちになります。責められた側からすると、気持ちの良いことではなく、その場から逃げたいと思ったり、どうにか反論をしてやろうと思ったりします。
相手を責める言い方になってしまう時は、「あなたがそういうことをするから」「あなたが先に言ったから」のように、主語が相手になっている場合が多いです。
しかし、“怒ること”とは“相手を責めること”ではなく、“あなたの気持ちや、あなたがどうしてほしいかを伝えること”です。
その場合、主語は自分になります。あなたが相手に何かを伝えたいのなら、「私は~思う」「私は~してほしい」と、あなたを主語にして話をしましょう。自分を主語にすることで、相手がどうではなく、自分が会話の主人公になります。
あなたが発するメッセージはあくまでもあなたのもの。主語が自分になることは自然なことなのです。
《advice》
日本語は主語があいまいで、主語を省略しても話せるのですが、あえて自分を主語にして話してみましょう。
程度言葉を避ける
代表的な言葉は「ちゃんと」「しっかりと」「きちんと」

怒る時に使ってほしくない言葉があります。そのひとつが「程度言葉」です。程度言葉とは、「ちゃんと」「しっかりと」「きちんと」といった、程度を表すものです。
「ちゃんとして!」と怒っても、相手は「ちゃんとしてるのに!」と思うかもしれません。「しっかりしてくれ!」と言えば、「しっかりしてるのに」と不満を持たれます。
「ちゃんと」と言った時、何をどれくらいしたら「ちゃんと」になるのか、あなたはなんとなく知っています。だから「ちゃんと」と言えば、相手もわかってくれると思うでしょう。
ところが、あなたが使う「ちゃんと」は相手が理解する「ちゃんと」と程度が違うことがあります。むしろ、あなたの「ちゃんと」と相手の「ちゃんと」が完全に一致していることのほうが稀でしょう。
程度を伝えたいのであれば、それが一体どのくらいの程度なのか、具体的に言わないと伝わりません。
《advice》
「使ったらちゃんと片づけて」よりも「使ったら元にあったように戻しておいて」のほうが具体的です。
決めつけ言葉を使わない
相手に反感を持たれたら伝わらない

「いつも」「絶対」「必ず」「みんな」といった表現もよく使いがち。これらは「決めつけ言葉」です。自分が勝手にそう決めつけているだけであって、実際にはそうなっていないもののことを言います。
「いつも」と言う時、本当は「多くの場合」とか「大抵は」という意味なのですが、大げさに言いたいし、そう決めつけたいので「いつも」という強い言葉を使ってしまいます。
でも、「いつも同じミスをするね」と言ってしまうと、相手は責められていると感じるので、「いつもじゃないのに!」と反感を覚えます。
だから、できるかぎり正確に、丁寧に伝えましょう。「いつも同じミスをするね」ではなく、「同じミスをするのはこれで2回目だね」のように、事実に即して具体的に伝えてください。
相手に伝えたいことがある時、とても大事なのは反感を持たれないことです。反感を抱いたら、相手の言っていることを素直に聞こうという気になりません。そうなったら、当然伝わりにくくなります。
《advice》
決めつけは、相手を論破しようとする行為。論破は日常生活では人間関係を悪くするだけです。
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『そんなに怒らニャくてもいいんだよ
ネコと学ぶ心が軽くなる方法』
著者/安藤俊介
宝島社 1650円(税込)

安藤俊介
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会ファウンダー。新潟産業大学客員教授。アンガーマネジメントの理論や技術をアメリカから導入し、日本に広めた第一人者。教育現場や企業などで講演、研修、セミナー、コーチングなどを行っている。ナショナルアンガーマネジメント協会(アメリカ)では、15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアジア人としてただ一人選ばれている。『[図解]アンガーマネジメント超入門「怒り」が消える心のトレーニング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『アンガーマネジメントを始めよう』(だいわ文庫)、『もう怒りで失敗しない! アンガーマネジメント見るだけノート』(宝島社)など著書・監修書多数。










