文/鈴木拓也

15年ほど前、麹を塩で加工した塩麴が、ブームと呼べるほど注目された。その後、熱狂は落ち着いたが、腸活の流行とともに麴は再び脚光を浴びている。
その牽引役の1人が、麹料理研究家の阿部かなこさんだ。
阿部さんによれば、麹から作った調味料は、健康に良く、調理時間を短縮し、なによりも料理を一層おいしくしてくれる影の立役者だという。
すでに2冊のレシピ集を出している阿部さんだが、3冊目の新刊が『一日をいたわる 麹のスープ』(大和書房 https://www.daiwashobo.co.jp/book/b10131682.html)。麹調味料を使ったスープ、ポタージュ、カレーなど、バラエティに富んだ汁物が、猛暑に疲れた身体をいやしてくれる。
今回は本書より、麹調味料とそれを使ったスープを2品ずつ紹介しよう。
和洋中オールマイティに使える「塩麹」
本書に登場する麹調味料は6種類。なかでも最もベーシックといえる塩麹の作り方も掲載されている。
用意する材料は、米麹(乾燥)100g、水150ml、塩35g。これらを一度にミキサーやブレンダーにかける。そのあとは発酵させるが、ヨーグルトメーカーを使う場合と、使わない場合(常温発酵)の2通りのやり方が記されている。
常温発酵だと、消毒した保存容器に移して、1日1回、清潔なスプーンで全体をかきまぜる。今の時期(夏)だと4~5日で完成。冷蔵庫に保存し、3か月以内に使い切る。

昔ながらの郷土料理に塩麹をアレンジした「石狩スープ」
「一汁一食で免疫力を上げるスープ」の章に出てくるのが、このスープ。塩麹と、食物繊維やオリゴ糖が豊富な食材を用い、腸内の健康を保つ助けになる。

【材料(2人分)】
・じゃがいも……1個
・にんじん……1/2本(約70g)
・たまねぎ……1/2個
・鮭(切り身)……2~3切れ
・A
塩麹……大さじ2
酒……大さじ1
みりん……大さじ1
水……400ml
・バター……5g
【作り方】
1. じゃがいも、にんじんはひと口大に切る。たまねぎはくし形切りにする。鮭は汁気をキッチンペーパーでおさえ、ひと口大に切る。
2. 鍋にAと1.を入れてひと煮立ちさせたらおとしぶたをして弱火で15分煮詰める。
3. 仕上げにバターを加えて完成。
しょうゆと麹のWで発酵させる「しょうゆ麹」
塩の代わりにしょうゆを使ったバージョンで、まろやかな塩味が特徴。米麹(乾燥)100g、しょうゆ150mlを一度にミキサーやブレンダーにかける。発酵のやり方は、塩麹と基本的には同じだが、常温発酵の場合、麹が水分を吸うので、常に麹が浸かるよう50mlのしょうゆを継ぎ足す。

きのこをふんだんに使った「3種のきのこの担々鍋」
しょうゆ麹を使った鍋物の1つがこちら。食物繊維に富む、もやしやきのこ類がボリュームたっぷりだが、胃にもたれず体が温まる。締めにちゃんぽん麺を入れてもいい。

【材料(2人分)】
・もやし……1/2袋(約125g)
・しめじ……1パック(約100g)
・えのきだけ……1/2袋(約50g)
・まいたけ……1パック(約100g)
・にんにく……1片
・豚ひき肉……180g
・コチュジャン……大さじ1
・A
しょうゆ麹……大さじ1と1/2
酒……大さじ1
味噌……大さじ2
みりん……大さじ1
ねりごま……大さじ1
水……600ml
・ごま油……大さじ1
・卵(お好みで)……1個
【作り方】
1. しめじ、えのきだけは石づきを落とし、手でほぐす。まいたけは手でほぐす。にんにくはみじん切りにする。
2. ボウルにAを加えてよくまぜる。
3. 熱した鍋にごま油を入れ、1のにんにく、豚肉、きのこ類、コチュジャンを加えてよく炒める。
4. 3にAともやしを加える。ひと煮立ちさせたら弱火にして7分煮込む。好みで卵を割り入れ、約3分煮込んだら完成。
本書の料理撮影:濱津和貴
【今日のおいしい1冊】
『一日をいたわる 麹のスープ』

定価1650円
大和書房
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。
