20世紀初頭のウィーンでは、純粋美術だけではなく、日用品を通して高い美意識を表現したウィーン工房の作家たちが活躍していました。そうした時代の空気を吸収して陶芸家、ルーシー・リーが誕生しました。

1989年、草月会館の展覧会で本格的に紹介されて以降、日本人ファンを魅了し続けるルーシー・リーの作品は、イギリス陶芸界の中心的存在だったバーナード・リーチや一緒に個展を開いたこともある濱田庄司らとの交流から生まれた東洋陶磁へのまなざしが感じられます。

ルーシー・リー《青釉鉢》1978年 国立工芸館蔵 撮影:アローアートワークス

国立工芸館で開催の「移転開館5周年記念 ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」は、国内の貴重なルーシー・リー作品が一堂に会す展覧会です。(9月9日~11月24日)

ルーシー・リー《ブロンズ釉花器》1980年頃
井内コレクション(国立工芸館寄託)撮影:品野 塁

本展の見どころを、国立工芸館の広報にうかがいました。

「20世紀を代表するイギリスの陶芸家ルーシー・リー(1902-1995)。日本でも高い人気を集める彼女の作品を国立工芸館に寄託された井内コレクションを中心に紹介します。

オーストリア・ウィーンで生まれたルーシー・リーは、ウィーン工芸美術学校で、轆轤(ろくろ)に魅了され、陶芸の道へと進みます。

ルーシー・リー《鉢》1926年頃 個人蔵 撮影:野村知也

作家としての地位を確立しながらも、1938年に亡命を余儀なくされると、作陶の場をイギリス・ロンドンへ移します。渡英した当時、イギリスの作家は東洋のやきものに大きな影響を受けていました。ウィーン、ロンドン、当時の美術のエッセンスを吸収し昇華した彼女の作品の魅力。出会った人、もの、場所、そして時代背景を交えながらその作品を紐解きます。

ルーシー・リー《黄釉鉢》1958年頃
井内コレクション(国立工芸館寄託)撮影:品野 塁

本展は、10年ぶりの開催となる大回顧展です。交流のあった作家たちの作品もふくめ、約120点の貴重な作品が一堂に会します。私たちを魅了してやまないルーシー・リーの繊細かつ優美な造形世界をお楽しみください」

制作初期から円熟期まで、ルーシー・リーの作品が網羅されています。ぜひ会場に足をお運びください。

ルーシー・リー《スパイラル文花瓶》1980年頃
国立工芸館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト

【開催要項】
移転開館5周年記念 ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―
会期:2025年9月9日(火)~11月24日(月・振休)
会場:国立工芸館
住所:石川県金沢市出羽町3-2
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
公式サイト:https://www.momat.go.jp/craft-museum/exhibitions/564
開館時間:9時30分~17時30分(入館は17時まで)
休館日:月曜日(ただし9月15日、10月13日、11月3日・24日は開館)、9月16日(火)、10月14日(火)、11月4日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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