八丈興発|「東京島酒」を牽引する

島いちばんの規模ゆえにタンクも大きい。3代目の小宮山善友さん(左)と心平さんが発酵中のタンクに近づくと、コポコポと酵母が炭酸ガスを発生させる音が聞こえてきた。
華やかな香りとまろやかな口当たりの『情け嶋』は25度。700mLは1243円、900mL2233円。ほかに『麦冠情嶋』『情け嶋 芋』『おかげさま三年熟成古酒』がある。

東京島嶼(とうしょ)部の焼酎蔵のリーダー的存在が八丈興発の3代目、小宮山善友さんだ。2006年に家業に入り、各地の地酒専門店の販路開拓を積極的に行ない、ほかの酒蔵との連携を深め、「東京島酒」の活性化に励んでいる。八丈興発は善友さんの祖父、善之助さんが1947年に、「八丈島の特産を興して島外に発信しよう」と仲間たちとはじめた会社である。

蔵は、海が目の前で背後に三原山、その先に八丈富士を仰ぐ。

「雨が山に降り注ぎ、その雨水が土で濾過され、軟らかな水となり、その水が酒の素となることを実感させてくれます」と心平さんが言うと、「そうなのです。自然に育まれたよい水と麦麴があってこそ『東京島酒』は成り立つのです」と善友さんが答える。

民謡「情け嶋」を冠した焼酎は、東京島酒のうちもっとも多く造られ、島外でも愛飲者が多い。心平さんもそのひとりで、「まろやかで芳醇。絶妙な口当たりのよさに感服します」と力を込める。

島ならではの美味に酔う

東京島酒と相性のよい料理を、と善友さんが紹介してくれた『島割烹 粋や』に向かう心平さん。主人・奥山清さんが飛魚のたたき、明日葉のごま浸し、キハダマグロの角煮、岩海苔の炙りなどでもてなしてくれる。

八丈島出身、さまざまな名店で研鑽を積んだご主人とカウンター越しに料理談義。
たっぷりと身が厚いお造り1600円〜(内容はその日により異なる)は醬油と島唐辛子でいただく。銘柄を5種選択できる「利き酒セット」1500円〜で刺身との相性を見つけたい。「軽やかな『芋なさけ』が尾長鯛のコクと合う」と心平さん。

「島だけの限定酒『江戸酎 蒼』に島の柑橘カブツを絞るソーダ割りが爽快で、お造り、煮物、フライとの調和がすばらしい」と心平さん。

たっぷり酒と料理を味わったあとは『東京島焼酎専門店 山田屋』へ。東京島酒がすべて揃う棚を眺め心平さんは、「素材や製造はほぼ同じなのに、みな個性が異なる東京島酒。僕だったらどんなふうに酒の魅力を引き出せるか、と料理のアイデアが湧いてきました」と、焼酎を手に帰路に就いた。

八丈興発

三原山を背に、広々とした地に立つ工場。

東京都八丈島八丈町三根1299
電話:04996・2・0555
蔵見学は事前に要予約

島割烹 粋や

島の名物「うみかぜ椎茸」800円を使った肉詰めフライ。きめ細かな衣をまとった、繊細な揚げ加減だ。

東京都八丈島八丈町大賀郷2434-3
電話:04996・9・5611
営業時間:17時30分〜22時
定休日:水曜

東京島焼酎専門店 山田屋

『山田屋』を取り仕切る社長の山田達人さん。ワインのテロワールのごとく、東京島酒のよさを世界に伝えたいと、蔵人を応援する。
コロナ化で角打ちを断念し、誕生したのが濃厚ソフトクリームに東京島酒をかけたもの(600円)。焼酎はデザートにもなるのだ。

東京都八丈島八丈町三根1952-1
電話:04996・2・1161
営業時間:10時〜19時
定休日:月曜

旅人 栗原心平さん(料理家)
1978年、静岡県下田市生まれ。料理家 栗原はるみを母に持ち、幼いときから得意だった料理の腕を生かし、料理の道に。全国の産地や生産者を訪れ、さまざまな食材やお酒をヒントにごはんのおかずやおつまみレシピを提案。テレビ出演、雑誌連載、著書多数。

取材・文/山﨑真由子 撮影/寺澤太郎

サライ2025年7月号大特集は『夏に沁み入る本格「焼酎」』

 

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