
良質な日本酒に出合う機会が増え、「もっと日本酒について知りたい」「体系的に学びたい」と考える方も多いのではないでしょうか。実は、日本酒を学ぶための様々な資格が存在します。初心者向けの気軽なものから、専門家レベルの高度なものまで、幅広い選択肢があります。
本記事では、日本酒の資格について詳しくご紹介します。資格の種類や難易度、取得するメリットなど、これから日本酒の世界に踏み出そうとしている皆様のお役に立つ情報をお届けします。
文/山内祐治
目次
日本酒資格の難易度とは? 初心者から専門家まで、レベル別の資格体系
【日本酒 資格一覧】知っておきたい主要な日本酒資格
【日本酒 おすすめ資格】初心者にぴったりの資格とは
【日本酒ナビゲーター】入門者におすすめの資格を詳しく解説
【SAKE検定】ワインの知識を持つ方にもおすすめの資格
日本酒の資格を取得する意味とは? 知識が広がり、生活が豊かになる
まとめ
日本酒資格の難易度とは? 初心者から専門家まで、レベル別の資格体系
日本酒の資格は、その難易度によって大きく3つのレベルに分けることができます。
初心者向け資格には、日本酒ナビゲーター(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会主催)、日本酒検定(FBO 料飲専門家団体連合会主催※FBOグループのSSI系資格体系の一つ)、SAKE検定(日本ソムリエ協会主催)があります。
中級〜上級者向け資格については、より深い知識と実技を求められ、テイスティング能力や提供技術なども評価されます。これには唎酒師、国際唎酒師(海外で日本酒を広める方向け)、SAKE DIPLOMA(日本ソムリエ協会認定)、酒匠(さかしょう。利酒師の上位テイスティング資格)、日本酒学講師(一次〜四次の厳格試験)があります。
さらに高度な専門資格としては、酒造技能士=国家検定(技能検定)の清酒製造分野に相当(実務系の国家資格)、SSI研究室専属テイスター、唎酒マイスターが存在します。
【日本酒 資格一覧】知っておきたい主要な日本酒資格
初心者向け資格の詳細
日本酒ナビゲーター
日本酒サービス研究所(SSI)が主催する入門レベルの資格です。オンデマンドコースで好きな時間に学習できるほか、会場での受講も選べます。日本酒の基礎知識を体系的に学べる良い入口となります。
日本酒検定
FBO(フード・ビバレッジ・オーガナイゼーション)が主催する、5級から1級までのレベル別資格です。初級者は5級、4級からスタートし、オンラインで受験可能です。上位級(3級以上)は会場での受験が必要になります。段階を踏んで学べるのが魅力です。
SAKE検定
日本ソムリエ協会が運営する、比較的新しい資格です。平日または週末に全国で実施され、約2時間半の座学後に試験が行われます。50問中35点以上で合格となります。ワインと共通する体系で理解しやすいのが特徴です。
中級〜上級者向け資格の詳細
唎酒師
所定の講習ののちに1次から4次まで4段階の試験があり、テイスティングやサービスなど実技も含まれます。特に飲食業界や酒販業界で活かせる実践的な内容で、2日集中コースなどの実施もあります。
国際唎酒師
海外で日本酒を普及させたい方向けの資格です。利酒師と同格ですが、試験内容が異なります。
SAKE DIPLOMA
日本ソムリエ協会が2017年から始めた資格で、ワインのテイスティングメソッドを応用した方法で日本酒を評価します。テイスティンググラスを使って香りと味わいを識別する高度な内容です。一次(CBT)+二次(テイスティング&論述)という試験形態です。
国際版のSAKE DIPLOMA INTERNATIONALも併設しています。ワインと日本酒の両方に興味がある方におすすめです。
【日本酒 おすすめの資格】初心者にぴったりの資格とは
日本酒の資格を初めて取得する方には、どの資格がおすすめでしょうか。
最も手軽に始められるのは「日本酒ナビゲーター」。オンデマンド受講が可能で、自分のペースで学習できます。日本酒の基礎知識を体系的に学べるため、まずはこの資格から始めるという選択肢は理にかなっています。
段階的に学びたい方には「日本酒検定」。5級から始めて、徐々にレベルアップしていく楽しさがあります。合格するとバッジがもらえるので、達成感も得られます。
ワインの知識がある方には「SAKE検定」。日本ソムリエ協会主催のため、ワインと共通する用語も登場します。ワインの知識がある方にとっては理解しやすい内容です。
それぞれの資格は学習方法や試験形式が異なるため、自分のライフスタイルや目的に合わせて選ぶとよいでしょう。いずれの資格も、合格するとバッジなどが贈られ、達成感を感じられます。
【日本酒ナビゲーター】入門者におすすめの資格を詳しく解説
日本酒ナビゲーターは、日本酒サービス研究所(SSI)が運営する初心者向け資格です。この資格の大きな特徴は、受講方法の柔軟性にあります。
受講方法
・オンデマンド受講:好きな時間に自分のペースで学べる
・会場受講:講師から直接学べる
学習内容
・日本酒の歴史
・製造方法の基礎知識
・主な銘柄や種類
・適切な提供方法
日本酒ナビゲーターは、日本酒の入門として最適な資格であり、さらに上位資格である利酒師への足がかりにもなります。日本酒に関する体系的な基礎知識を習得したい方におすすめです。
https://ssi-sake.jp/sake-navigator/
【SAKE検定】ワインの知識を持つ方にもおすすめの資格
SAKE検定は、日本ソムリエ協会が運営する資格で、ワインのテイスティング手法を日本酒に応用した特徴があります。
SAKE検定の特徴
・平日または週末の昼頃に全国で実施
・約2時間半の座学の後、試験実施
・50問中35点以上で合格
・合格者にはバッジを贈呈
学習内容
・日本酒の種類と特徴
・製造工程
・適切な保存方法
・料理とのペアリング
SAKE検定は、ワインと日本酒の両方に興味がある方や、国際的な視点で日本酒を学びたい方に特におすすめです。ワインで使われる評価方法を用いるため、海外の方々と日本酒について語り合う際にも共通言語として役立ちます。

日本酒の資格を取得する意味とは? 知識が広がり、生活が豊かになる
日本酒の資格を取得することで、得られるメリットは数多くあります。単なる知識の証明だけではなく、実生活を豊かにする実用的なスキルが身につきます。
日本酒の資格取得で得られるメリット
- 体系的な知識の習得 日本酒の歴史、製造方法、種類などを体系的に理解できます。断片的な知識ではなく、全体像を把握することで、より深い理解が可能になります。
- 専門用語の理解 「純米大吟醸」「山廃仕込み」「生酛造り」など、日本酒の世界には多くの専門用語があります。これらを正確に理解することで、お店での選択肢が広がります。
- 酒販店や酒蔵での対話が深まる 専門知識を持っていることで、酒販店の店主や蔵人との会話がより深く、専門的になります。自分の好みや求めているものを的確に伝えられるようになり、新たな出合いのきっかけにもなります。
- 料理とのペアリング能力 特にSAKE DIPLOMAなど上位資格では、料理と日本酒のペアリングについても学びます。これにより、食事と日本酒の組み合わせの幅が広がり、食卓がより豊かになります。
- さらなる探究心の育成 資格取得は終着点ではなく、むしろ新たな探究の始まりです。学ぶほどに日本酒の奥深さを実感し、さらなる好奇心が生まれます。
日本酒の資格取得は、単なる肩書きではありません。それは日本の伝統文化への理解を深め、日常生活をより豊かに、より味わい深いものにするための実用的なツールなのです。
まとめ
日本酒の資格は、初心者から専門家まで、様々なレベルに対応しています。まずは自分のレベルや目的に合った資格から始めてみてはいかがでしょうか。資格取得の過程で得られる知識と経験は、きっと皆さんの日本酒ライフをより豊かなものにしてくれるでしょう。
資格取得は、日本酒を「知る」「選ぶ」「楽しむ」ための確かな道しるべとなります。ぜひ、この機会に日本酒の資格に挑戦してみてください。

山内祐治(やまうち・ゆうじ)/「湯島天神下 すし初」四代目。講師、テイスター。第1回 日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMAコンクール優勝。同協会機関誌『Sommelier』にて日本酒記事を執筆。ソムリエ、チーズの資格も持ち、大手ワインスクールにて、日本酒の授業を行なっている。また、新潟大学大学院にて日本酒学の修士論文を執筆。研究対象は日本酒ペアリング。一貫ごとに解説が入る講義のような店舗での体験が好評を博しており、味わいの背景から蔵元のストーリーまでを交えた丁寧なペアリングを継続している。多岐にわたる食材に対して重なりあう日本酒を提案し、「寿司店というより日本酒ペアリングの店」と評されることも。
構成/土田貴史











